「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
- 作者: エマニュエル・トッド,堀茂樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/05/20
- メディア: 新書
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税金を納めない国民(2009年の財政危機を救ったのは国民のタンス預金という体たらく)、国債を買わない国民、国外から借り入れなければ行政予算が組めない国に金融支援を行っても、緊縮財政を行っても砂漠にじょうろで水を撒くようなものです。
ギリシャに求めるべきは緊縮財政以前にEU残留とユーロからの離脱です。
ギリシャのユーロ残留はドイツ、ギリシャ双方にとって不幸です。
共通通貨は域内の勝者と敗者を生みます。勝敗の逆転は禁欲的求道者と享楽的楽天主義者との性格転換を行うようなものです。ユーロはドイツに万年通貨安をもたらし、ギリシャには万年通貨高をもたらします。
主力産業である観光収支を悪化させ税収を減少させ悪循環を断ち切ることができません。
緊縮反対と言いながら未来永劫に亘って債務の返済を迫られ続ける(緊縮を迫られ続ける)道であるユーロ圏残留を望むとは、ギリシャ国民は倒錯しています。
ユーロに残留している限りドイツから「もっと節約しろ」と言い続けられます。
ユーロの意義は旧ソ連圏の救済措置にあります。ソ連崩壊後、国際市場に復帰した東欧諸国、為替市場は東欧諸国の通貨の扱いに困ります。東欧が通貨安で混乱に陥るところをユーロの導入で防止されました。目的は強い側が弱い側を救済することにあるのですから、旧西側諸国で入るべきはドイツ、ベネルクス、北欧の経済強国であり、足を引っ張るかたちになる南欧諸国は入るべきではなかったのです。
EU残留の条件として借金は棒引きにする、経済敗戦国に対する賠償金を請求しないということです。ポピュリストの跋扈を防ぐのです。第一次大戦の戦後処理でドイツに莫大な賠償金を課したことがナチスの台頭を招いたことの教訓です。
ただしお金は貸さない。脱税し放題の今の状態ではEUが要求する緊縮財政を組んだとしても返せる訳がありません。
輪転機をプレゼントする。併せて偽札防止の技術支援を行う。自国通貨を税収という形で国内循環させること、国外からの借り入れに頼らずに税収と国民、国内企業が購入する国債で予算を組むこと。
ドラクマを刷りすぎたらユーロとの交換率が悪くなる。少ないとデフレになる。
徴税を厳しくすれば国民の側も汚職に厳しくなる。長年ギリシャ財政を蝕んできた脱税と汚職の問題の解決なくしてはいかなる金融政策も効果が望めないのです。
温暖な気候、美しい風景、歴史遺産の数々。日本のようにPRをしなくても各国の歴史の教科書がギリシャ観光の宣伝をしてくれるという恵まれた条件を活かして観光収入の増進を図る、観光客が逃げ出すような暴動は起こさない。エーゲ海の無人の小島を世界の富豪に貸借して莫大な賃貸収入を得る、観光を契機にして農産物の輸出を伸長させる。税金はしっかり徴収し将来の夢を語って国民に国債購入を呼びかけ、交通インフラ投資を行い鉄道道路網を整備更新して観光産業のさらなる伸長と3大産業のひとつである海運の後押しをする。
良い循環が生まれれば、貸したくなる投資家が現れます。