nikoichixのブログ

新聞やテレビ、本を見て思ったことを綴っています。書いてみたらこんな展開になるとは思わなかった。まいっか。

デモの影響で非民主化が進むという逆説ー民主的な民法改正案が先送りに

今国会で生活に関わる重要な審議が行われる予定でした。それがなくなるかもしれません。

脱時間給法案を断念 民法改正・カジノも 安保法案の審議優先(2015年9月3日 日本経済新聞

 

与党も野党も安保に夢中で民法改正の審議の時間がなくなった。

他の二つは微妙(趣旨に反する悪用を防ぐセーフティネットが不十分)だけど民法改正は是非とも実現してほしいところです。

 

民法改正のメリット  

 

その1 保証人の制限・保護

限度額(金額の枠)を決めなければ無効

いくらまでなら保証すると金額を明示して決めなければダメ、保証人が事前に知らされていない金額まで負担することはないということです。

 

その2 敷金は原則返還

返還する敷金の控除(差し引き)について、部屋を明け渡す際の損傷が賃借人の責めに帰することができない場合はこの限りではない。

経年変化による日焼け等は賃借人の責任か?業者によって対応が異なりもめることがありました。改正法施行後は返還を求めやすくなります。

 

その3 定款 約款

インターネットで契約や取引をするとき、ぎっしり文字が書かれていて画面をスクロールしながら読んで最後に同意ボタンを押すあれです、全部理解してボタンを押している人がどれだけいるのでしょう。

不当な条項や変更にたいして消費者保護のために規制を行うということです。

 

他にも事業融資を金融機関から受ける場合の保証人の範囲の制限(役員等従事者とその配偶者に限られる。

事業に関わっていない知りあいを保証人にする場合等は契約の締結1か月前に公正証書の作成を義務づける。契約書だけではダメ)

 

金融機関から「保証人をつけて下さい」と言われて知り合いに頼んで保証人になってもらっても1か月後でなければ契約を締結できません。

公証役場に控えのある公正証書の日付を変えたらすぐにバレますし犯罪です。

せっぱつまった状態の経営者が第三者を巻き添えにすることを防ぐということです。

 

担保価値と保証人の資産に対する融資ではなく、経営者自身の信用や事業の採算性、可能性を見極めて融資する姿勢が求められます。

 

交通事故や医療事故による労働損失の計算利率が変わり、被害者の権利が大きくなる。

 

短期時効が廃止されて、「権利は10年間行使しなければ消滅する」と「権利行使できると知った時から5年」の時効期間に統一される見込みです。(でした。にならないように)

時効は原則10年で統一されるということです。飲み屋さんが、つけの客に1年で時効にされるということがなくなるということです。

ただし請求される側が、請求者が請求する権利があることを知った時期を請求書等で証明できれば時効は5年で完成するということでもあります。

(お互いに口約束はやめましょう、領収書(何の請求に対する領収書なのかわからないものは困る)がないのに請求書を捨てたりすることはやめましょうということです。)

 

いろいろ抵抗があったと思う、120年間 明治時代以来の改正という歴史的イベントが先送りされそうです。

 

与党は早く審議したいから安保法制を早く通せ、野党は審議に応じるから早く安保法制を廃案にしろ。お互いに民法改正を人質にとって(法質?)譲らない。

 

 

どうしてそんなに頑張るのか、廃案になれば影響は国内に止まらない。

アジアのパワーバランス、アメリカの影響力が低下したら中国の一人勝ちになるという東南アジアの不安、水資源の奪い合い、13億の人口を支えるためには資源の確保は欠かせない。

皆が日本人並みの生活を送るためにGDP13倍を目指したら資源の爆食が始まります。

 

第二次大戦前の中国の人口は5億でした。2倍以上に増えた人口、国土が広いのに食糧が自給できない、国土が養い得る人口を超えてしまった。

アフリカ、アジアへの経済支援には国内の口減らしのために中国人労働者がついてくる。支援先の雇用には繋がらない経済支援摩擦。

周辺国と摩擦を起こさずに宥和を目指すとそのしわ寄せで国内の不満を招くというジレンマを抱えています。

 

(程度は違いますが、かつて日本も国内の口減らしのために満州や朝鮮、南米に人を送りました。戦前の日本に似てきています。

戦前の日本は悪かったという人たちは今の中国をどう見ているのでしょう。)

善悪の話ではなく、人口問題が中国政府の選択肢を狭めているのです。

 

ホルムズ海峡はあくまで想定、リアルな想定を話せば外交摩擦になることを懸念して与党側は語らない、野党側も承知の上で質問するのですから国民の理解が深まる道理がないのです。

 

今は野党の立場だから反対しているけど、いざ政権を握ったら推進する側になりかねないという疑念を払えない。(反対する野党の中には与党時代は推進する側だった人もいる)与党の支持率が低下しても野党の支持率向上には繋がらず無党派層が増加する。

 

イギリスの首相チャーチルは「イギリスの仮想敵国はどこか」と訊かれて「イギリス以外の国全部」と答えました。日本の国会の議論はジョークにしか聞こえないのではないか。

 

国内的な影響 与党側は廃案にすれば政権の求心力が低下する。今後の国政運営に関わる。引くわけにはいかない。

野党側は時間を稼いで衆議院と同様に参議院強行採決に持ち込んで政権のイメージダウンを誘いたい。追い込んで地方選を有利に進めて党勢を立て直したい。

 

民法改正は政争の犠牲となるのか。

 

 60年安保闘争のもたらした結果は 沖縄への米軍基地集中(本土からの移転)。

 

アラブの春のもたらした結果は ISの台頭。

 

第二次大戦前の平和を希求する英米仏市民の願いは宥和派の政治家の後押しをして ナチスの台頭を許した。

 

アフガニスタン民兵武装解除の結果は 抑止力がなくなってタリバンが復帰。

 

タイのデモの結果は クーデターによる軍事政権の誕生。

 

日露講和に反対した日比谷暴動の結果は 新聞の検閲。

(ロシアから得る賠償金がないこと、領土の割譲が少ないことに不満を訴える新聞に煽られて市民が暴動を起こしました。

講和に反対とは戦争を続けろということです。戦争を終わらせたい政府に戦争を続けろと新聞が迫ったのです。もたらした結果は新聞の検閲でした)

 

運動の趣旨とはかけ離れた結果がもたらされました。

 

デモの主催者の発表では12万人集まった。12万人も集まったと言えるのか、12万人しか集まらなかったと言えるのか。

 

そもそも国会前の広場に12万人も入れるのか?主催者の発表をそのまま流すだけではなく、検証した上で掲載することが新聞に求められる。

 

審議中の法案は一つだけではない、国も一つだけではない、国内問題だけでは済まない。

影響を与えあって運動の趣旨とはまるで違う話が出来上がることを知識としてではなく体感的に知っている人はデモへの参加を躊躇する。

 

欧米のデモは投票した上でデモにも参加する。

民主化が進んでいない国では自由な投票ができないからデモで意思表示する。

民意と考えられます。

 

日本の場合は投票する権利が保証されているのに投票に行かないでデモに参加する。

民意であるのか疑問があります。

 

考えは環境でつくられる。100% 1人の中から出てきた考えというものはない。

家庭環境、周囲の人間関係、触れてきた媒体、新聞、テレビ、生まれてから今まで読んできた本の影響を受けてつくられる。

 

nikoichiが平和運動に懐疑的なのはチャーチルの影響を受けています。

 

邪悪なる者の悪意は、有徳なる者の弱さによって強められる。

慎重と自制を説く忠言が、致命的危険の主因となり得る。

安全と平穏を求めて採用された中道は、災害の中心点へ結びつく。

 

譲歩をしたつもりでも、相手は善意と受け取らずに弱さと受け取る。

行動を取らないことが相手に誤ったメッセージを送ることになる。

中庸を選んだつもりでも、相手にとっては無意味な代物であったり、悪意と受け取られることもある。

 

運動の趣旨とはまるで違う話が進行していかないか注視していきます。