nikoichixのブログ

新聞やテレビ、本を見て思ったことを綴っています。書いてみたらこんな展開になるとは思わなかった。まいっか。

旭化成建材 マンション傾斜問題  工期は技術要件ではなく資金要件で決められた。―ここでもスズキ・VW、東芝と似た話が

マンション建設の工期は建物の規模や地形や岩盤の深さや形状といった土地の条件からくる技術的要件で決まると思っていた。

ところが技術的要件以前に資金の問題が横たわっていました。

 

横浜のマンション傾斜発覚から1ヶ月経過して、他の物件でも杭打ち工事の改ざん報道が相次ぎ、その影響はマンションに留まらず建設業界全体に波及しています。

 

国も自治体もすべての建設現場を直に監視することなんて無理!

そんな人員も予算もない。

書類を信じる他ない、その書類が改ざんされていた。

 

書類が信用できない。すべての現場を抜き打ちチェックする人員もない。

やっても有効性に疑問がある、偶々不正の現場に行き当たるかは未知数。

まともな業者がバカを見るおそれもある。

 

◇◆◆

元々の原因は何?

 (日本経済新聞 2015年10月25日 下請けに工期の圧力)

『・住宅会社はマンション用地取得の資金を通常、借入でまかなう。完売時期が後にずれるほど金利負担が増す。

・現場のマンパワー等を考慮し、どれだけ工期を短く設定して早く売り出せるかが、開発担当者の腕の見せどころ。工期を延長する余裕はほとんどない。

 

・想定外の事態が発生すると、現場の作業スケジュールはきつくなる。

(強固な地盤が想定よりも深いところにあった。より深く くいを打ちこむために工期の延長が必要になった。)

 

・下請けが工期延長に伴う費用の上乗せを要求しても、住宅会社は契約外の追加料金は認めないこともある。

(費用以前に工期の延長も契約外)

・予定日までに工事が終らなければ購入者からクレームが殺到したり契約の見直しになりかねない。

 

・工期が延びたり、コストが想定を上回った場合、住宅会社は原則、元請けの建設会社の責任を問い、損害賠償を請求する。

矛先は元請けから下請けへ、2次、3次へと下層へ向かい易い。』という。

☆★☆

事実上拒否するということか、担当者が事実を報告しても受け入れる余地はないという組織運営構造になっていた。

 

元請け下請けが費用負担をする構図では住宅会社は当事者意識を持ちにくい。

費用負担がないことが前提の下では将来、会社にとって大事になりかねないことでも担当者にとっては他人事になる。

(先が見える担当者が費用負担を進言しても、上役が先の見えない人の場合、進言は却下されます。(2015年11月10日 日本経済新聞東芝の利益水増し不適切会計問題で事件発覚の6年前2009年に正常化を進言した担当者の意見が、経営者に却下されたという実例があります。)

 

下請けが一方的に費用負担をすることになっても公に訴え出ることはないだろう、仕事を回してもらえなくなる。

儲からないから手抜きをするところも出てくる悪循環。

 

契約を結んだのに情報開示をすること、情報開示を受け入れること、について双方が合意できていない状態。

 

契約する前に揉めるのではなく、契約を結んだ後で揉める。

 

契約する前にさんざん揉めて、契約した後は諍いを忘れて同志として協力し合うという話にならない。

 

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一般的な品質第一、お客様第一というスローガンに実態はあるか。

 

 

契約前に工期が遅れる場合の明示があるか、絶対にありませんという業者はあやしい。

遅れる理由を説明できない業者もあやしい。

遅れることは絶対に許さないというユーザーも危うい。

 

聞きたい話しか聞きたくない人はユーザー、発注元、元請け下請け立場を選ばず危うい。

 

原因:最優先事項は工期、その理由は販売会社の金利負担抑制。

 

 

販売会社も施工会社も補償に伴う莫大な費用負担を強いられることになりました。

その費用を捻出するために銀行からお金を借りて金利負担を負う。

金利負担を抑えるために工期を抑えたのに、そのために新たな金利負担を負うという矛盾を抱え込んだ。

品質を重視した場合の工期の遅れを上回るコスト増ではないのか。

部分最適だったのではないか。

 

ブランドイメージの毀損は今後の営業活動への阻害要因になる。

公共事業の入札から外される。

 

先に費用を抑えたつもりが後で売上減少と莫大な出費をもたらすことになった。

 

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VWと似た事件構造

VWの排ガス不正問題も技術はあるのにコスト削減圧力が強いために担当部門が必要なコストの負担を躊躇した、結果的に売上減少と莫大な補償の出費を強いられることになっています。

 

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「住宅会社の中には、数週間程度の工期の延長を建設会社に認めた会社もある。」

 

記事では三菱地所を例に異なる対応をする会社もあることが説明されていました。

事業者選びが重要ということです。

(11月13日 平成29年3月完成予定京都御所の東側、鴨川のほとりに建設中の三菱地所レジデンスのマンションの広告がありました。

5階建て、総戸数85戸、テラスは大文字山を向いているというある意味日本の中心に立地する物件です。金持ち喧嘩せずということです。)

 

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スズキとVWの提携はVW側がディーゼルエンジンの技術情報の開示を拒んだために解消に向かいました。(開示すれば排気ガス浄化システム走行時オフのことが知れてしまう)

 

横浜マンションの傾斜問題は住宅会社と下請けと従業員が隠しごとをする間柄でした。

 

「契約を結ぶ」とは隠し事をする間柄になることではなく、情報開示をする間柄になるということです。

そのために先にさんざん揉めて後で揉めないということです。

 

それではまた。