利益を増やすためにコストダウンしたのに、リコールや制裁や訴訟で利益が飛んでしまったら何のためにコストダウンしたのかわかりません。
顧客が離れる、金融機関の審査が厳しくなる、株価が下落する、社債の金利が上昇する、資金調達条件が厳しくなる事態に陥れば元も子もありません。
内部的な理由と対外的な理由
為替等外部リスクに備えて採算分岐点を下げる。
利益を前年度より向上させる経営目標達成のために各部門にコストダウンのノルマを課す。
内部的な理由です。
作業や工程のムダを工夫によって省くことは取引先のノウハウになりメリットになります。
ムダを省いた成果を顧客、従業員、株主に還元することは社会貢献になります。
品質の向上、給与賞与への反映、配当は景気を押し上げます。
対外的な理由です。
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誤解されたコストダウン
バブル崩壊後に某社の某車に乗り込んだらシートに違和感を覚えた。
クッションが抜けている。(クッション材(ウレタン)の密度が低い)、抑えてくれない、支えてくれない、この車を運転したら腰痛になるだろうと早々に候補から外れた。
コストダウンするところとコストダウンしないところのメリハリをつけずに各部門にノルマを課したのか。
各部門に平等にノルマを課さないと内部で不協和音が生じるという配慮の下にノルマが課されたのか。
ここを削ったらショールームでオサラバになって売れない、ここを削ったら後で対外的な問題になる。
全体を見てムダと判断したパーツ部門の担当者と個別に話して費用を削る理由を説明するのではないのだろうかと思った。
ハンドルが30種類もいるのか、時速100キロでバックする人がいるのか、誰も望んでいないところにお金をかけていないか。
エアコンスイッチを1車種で2種類3種類にしないで1種類に絞って購入数を増やす条件にして部品メーカーと交渉する手段にしたらどうか。
バブル崩壊前の国産車は同じ車種でもエンジン排気量毎にスタンダード、デラックス、カスタム、GL、SL、GT、スーパーツーリングなどと装備差をつけてグレード名を編み出していました。
1車種でシートの生地や柄、スイッチ(ダイヤル式、スライド式、プッシュボタン式)、ワイパーやライトの機能、ブレーキや足回りの構成や部品が何種類もありました。
1パーツ毎の購入数が少ないので割高になりました。発注数、生産数と受注のギャップが生じると在庫になりました。
高機能のパーツを全車種に採用すれば数量メリットで仕入価格が下がる。
納入側も多品目少量生産よりも少品目大量生産の方がコストが下がる。
ユーザーもグレード数が30もあったのが6~7に絞られて選び易くなった。
高機能パーツの全車種採用で最量販グレードでも見かけのしみじみ感がなくなりました。
20世紀はリッター10キロ走れば燃費がいい方でした。エアバッグや後席3点シートベルトは高級車だけの装備でした。
21世紀は当り前になりました。安全装備の標準化も進みユーザー、社会にメリットをもたらしています。
(国が規制をする前に先行して安全装備の標準装備化を進めるメーカーがある一方で、国が規制を定めてから導入するメーカーもありました。)
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実走行テストの前に行うシュミレーターによるテスト
シュミレーターは人間の入力した条件でシュミレーションをしていた。
AIが搭載されネットと繋がったシュミレーターは入力されない条件も外部から学習をしてシュミレーションを始めるんじゃないか。
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悪いコストダウン―コストダウンの目的化
ノルマを課す方も課される方もルーチンワークで値下げを目指す。
コストダウンが手段ではなく目的化する。
こちらからの提案はなしに値下げだけを要求する。
相見積もりを取って一番安いところに決めた。
安いのには訳があった。
食材の廃棄を委託した産廃業者が横流しをして利益を得ていた、だから安く出来た。
利益は横流しで得る、これで本業の廃棄処理の利幅は薄くても請け負える。
供給が途絶えた。決算書が黒字だったから取引をしたが黒字倒産だった。
注文ほしさに安い価格で請け負ったが、手持ち資金よりも多額の支払いが入金よりも先に来て不渡りを出した。
倒産したわけではないが供給が途絶えた。契約で原料の調達先を縛った。
原料調達先でストライキや自然災害が起きた。
仕入れ先が値下げ要求に応えるために原料や部品の調達先を変更した。
事前のテストや納入検査では問題はなかったが、ユーザーに納品してからトラブルが発生した。
大量調達で影響は拡大した。
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欠陥や食中毒のような問題にはならないが売上が落ちた。ユーザーは何か以前と違うという。
要求項目は満たしていたが要求項目以外がコストダウンの対象となり特性が変わっていた。
元請けの売上が落ちたら下請けの売上も落ちるから、黙っていてもいいものを供給するはず、それは先方の事情によって変わります。
無い袖は振れないから仕方がない。
値段の話しかしない、つき合ってもアイデアやノウハウ等得るところがない。
納入先を開拓したから、取引額を減らしていこう。
後継者がいないので事業を売却する。相手はライバル社の系列だった。
丸投げしていたから仕組みを知らない、問題が起きてもどこを直せばいいのかわからない。
組織の名を傘に着る人は組織の名を貶めます。
賛成していたのに上司に却下されたら最初から反対をしていたかのように意見を変える。
ダメ出しをしてつっ返すだけか。共に方法を考えるのか。
限られた予算でより良い商品、サービスを提供する手段にするのか
値段を下げること自体を目的にするのか。
相手にシワ寄せだけのコストダウンはやがて自分にはね返ってくる。
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個人生活のコストダウンの罠
食べ物は安いものだけで野菜も取らない生活をして節約しているつもりだった。
医者代、薬代が節約分を上回っていた。
医者代がもったいないと我慢していたら症状が重くなり治療費が高くついた。
早いうちにかかっていればよかった。
本当に欲しいものではなく妥協して買って馴染めず結局手放した。無駄な出費になった。
ファストフードで食事を済ませた後に、コンビニに入ってドリンクやらデザートを買って食べるくらいなら、レストランでデザート付きのランチを食べるのと費用が変わらない。
相続税対策になるからとタワーマンションを買っても相続の時点で税制が変わっていれば、うまい話はなかったことになる。
コスパ(コストパフォーマンス)を重視したつもりがコスパが悪い選択になっていないのか。
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目的と思っていることは実は手段に変わります。
コストダウンは手段、目的は利益の向上
利益の向上は手段、目的は事業の継続のため
社会貢献は手段、目的は社会の継続のため
社会の継続は手段、目的は人間という生命体の存続のため
自由は手段、目的は限られた資源でより多くの人の幸福を得るため。
自由競争は手段、目的は品質レベルの低い事業者を淘汰するため
他者を蹴落としてでも自らの利を追求してしまうのは自由を目的にしてしまったからなのです。
それではまた。