法令違反問題を起こしたことが明らかになると組織は「管理体制はどうなっているんだ」「コンプライアンス軽視ではないか」と非難を受けます。
専門家を呼び、検証し、管理体制の強化が図られます。
それでもまた問題を起こすと「腐っている組織だ」とか「どうしようもない」とか誹(そし)られます。
果たして腐っているから問題を繰り返すのでしょうか。
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専門家のアドバイスを受けて管理の強化が図られます。
ルールが厳格化されます。
こんなに厳しくしたのにどうしてまた問題を起こすのかと頭を抱えることになります。
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管理の強化で、下手に動いたらどんな罰が待っているかわからないと委縮して安全策をとって指示通りに動くようになります。
「指示待ち人間」とは言われたことしかやらない。指示するまで動かない人に対して向けられる言葉です。
「指示待ち人間」には別の側面もあります。
やってはいけないと言われていないことはやってしまいます。
そんなのはおかしい。指示するまで動かないのだからやるわけがないじゃないか。
指示とは通常は結果の指示です。過程の指示ではありません。
極端な話 過程を指一本の動き、言葉の一時一句まで指示するようなことはやりません。
そんなことをしていたら全世界の職場で業務が滞ります。
「指示待ち人間」も過程で工夫をする余地があります。
結果が良ければ工夫と言われ、結果が良くなければ癖と言われます。
或いは見られていないかです。
見過ごして外部に商品やサービスとして流出すると対外的な問題になります。
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幸いにして内部で発見した人を、うるさい人、面倒な人扱いすると後で面倒なことになります。
次から助けてもらえなくなります。保護すべきです。
管理者が見過ごして、他の部署で発見されたから面子が潰された。
注意・警告は悪口と受け取られる。
ルールを強化しても人の性格まで変えることはできません。
人には何かしらいやなところがあります。
そういう人でも長所があると(親切に)見てやらなきゃいけない。
(余談 人事の失敗例:石田三成は映画やドラマで小憎らしい人物として描かれています。
経済官吏としては有能でしたが、軍事は不得手であるのに朝鮮戦役の軍監として派遣され三成独自の正義感をもってルールを厳格に適用して指示を行いました。
※怜悧さと相まって戦場の実情に合っていない指示だと加藤清正、福島正則ら豊臣恩顧の家臣をはじめ、吉川広家、黒田長政らの反感を買い、後に関ヶ原敗戦へとつながりました。
秀吉が三成に軍事に関わらせたことは豊臣家と家臣団、石田三成本人にとって不幸の始まりでした。
軍功を誇って三成を侮る正則らを見て三成を気の毒に思ったのか、
軍事で活躍して正則らを見返す機会を与えてやろうという親心のような気持ちだったのか。
戦乱の時代が終ったのだから経済官吏として活躍させる道はなかったのだろうか。)
※怜悧 利口で賢いこと。反感をもつ相手からは小利口といわれる。
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ソニーの業績悪化で当時の経営陣は非難されました。
その経営陣を選んだ責任は問われないのか。選ばれた過程が詳(つまび)らかにされないと他の組織で似たような失敗が繰り返されるのではないか。
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閑話休題(それはさておき)
前任者のやり方をそのまま踏襲していた。前任者は先輩、上司。
法令と照合したり、専門書を調べて自社の方法と比較する人はマニアックな変な人。
和を乱す人。
波風は立てたくない。
波風を立てなかったために外部を巻き込む事件になり業績が悪化すると和を尊んでリストラになります。
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上からこれはやってはいけません。
これもやってはいけません。
上が想定していないことをやらかす度にモグラ叩きでキリがない。
下からも止める手立て(ボトムアップ)が必要です。
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問題を起こす組織には悪い人がいて、問題を起こさない組織には悪い人はいない。
そんなことはない。
トップダウンでやることはボトムアップの阻害要因を取り除くこと。
セカンドオピニオンを公式に認めること。
安易な制裁を慎むこと。報復を許さないこと。
上司と部下の双方が試される。
ホワイトな職場
「よくも俺の顔を潰してくれたな」と報復すると小さい奴と軽蔑される。
「やったぜざまぁ見ろ」と調子に乗ると嫌な人。
ライバル上司は後始末に手を貸す。
ブラックな職場
「よくも俺の顔を潰してくれたな」
「おっしゃる通りです。さようでございます。」と周囲が追従する。
「やったぜざまぁ見ろ。」調子に乗るなと言わずに同調する。
ライバル上司は不祥事を機会に追い落とそうとする。
ライバルに弱みを見せないために隠そうとする。
これではボトムアップは困難です。
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ブラック化を防ぐには
セーフティーゾーンを設けて早めの報告を奨励する。
僅かなことでも許されないとなると問題が大きくなるまで隠匿される。
処分は執拗に攻め立てて厳しく制裁することが目的ではありません。
必要かつ合理的な範囲に留めるものです。
子供が出来心で万引きをした。
罰は厳しくあるべきだ。万引きは死刑。
これでは親は子供を連れて謝りに行けない。連れて行けば鬼、人でなしになる。
誰も返しにも謝りにも行かない。却ってモラルが崩壊します。
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失敗を恥にすると隠す。リコールは失敗、失敗は恥、だからリコールは恥になる。
リコールを恥扱いにしない。
ホンダは現行フィットで 5回のリコールを行いました。
5回も何をやっているんだ。管理体制がなっていないと非難されました。
何も問題が無いに越したことはありませんが、だからと言って問題を隠していいことにはなりません。
過剰に何もないことが正しいということにすると、なかったことにすることが大人の判断という奇妙な理屈が生じます。
発売前にすべてを把握できればよかった。一度で問題の全貌を掴むことができなかった。完璧ではなかった。ユーザー、対応する部署、関係者に迷惑をかけた。
途中でやめるわけにはいかない。
その結果が5回になった。
5回もやったのかではなく5回もできるんだと思った。
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(日本経済新聞 2016年5月8日 企業面)
「ホンダ 世界で2000万個超 エアバッグ部品の追加リコール」
「ホンダはタカタ製エアバッグの不具合問題で世界で2000万個超のエアバッグ部品の追加リコール(回収・無償修理)を行う。
タカタ製エアバッグは作動時、異常破裂する不具合が起きている。
米運輸当局はタカタが使う火薬について高温多湿下に6~25年置いた場合、火薬の爆発力が高まる恐れを指摘。
米国で乾燥剤がないエアバッグ部品すべてのリコールを求めた。
高温多湿地域が多くない欧州では問題は起きていない。
予防措置を講じて当面のリコール範囲に目途をつける。
ホンダが事故のない地域でも大規模リコールに踏み切ることで、他の自動車メーカーに同じ動きが広がる可能性がある。」
失敗を恥扱いしていないから立ち直りが早い。
「マツダは既に16年3月期の連結決算で、乾燥剤が入っていないタイプのほぼ全量を対象に407億円の損失を計上した。」
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イギリス人も失敗を恥扱いしていた。
第二次世界大戦でイギリスの戦艦フッドはドイツの戦艦ビスマルクに撃沈の憂き目に遭いました。
フッドに同行したプリンス・オブ・ウェールズも大きなダメージを受けました。
海軍はフッドが撃沈されたこと以外は損害を小さく報告しました。ドイツ軍から甚大な損害を受けたことを隠しました。
その結果。
「大した損害を受けていないのに、どうしてフッドの仇を取らないでのこのこ帰って来たんだ」と国民から非難を浴びました。フッド乗組員の遺族はやりきれない思いだったでしょう。
それからは損害を隠さずに報告することになりました。
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トップダウンと罰則強化だけでは無責任が横行します。
言われた通りにしただけです。前任者から引き継いだ通りにしただけです。聞いていません、今 初めて聞きました。どこに書いてあるんですか。
売上至上主義が招くモラルハザード
期末に取引先から決算対策のために納品と売上計上、期を跨いだら商品を回収し売上をマイナスするという依頼を受けるべきか?
先方は売掛をプラスして翌月に売掛をマイナスするから翌月現金が出て翌々月現金が戻ってくる(はず)。
それにつき合って当方は買い掛けをプラスして翌月買い掛けをマイナスしたのに現金を支払ってマイナスして、翌々月現金を入金プラスする(はず)。
期首のマイナスはまた次の期末で辻褄合わせをしてくるに違いありません。
アホらしいと思うか。お付き合いだからとなぁなぁで済ますのか。
担当者から上司の決裁を得て経理で処理されたら組織の内部で通常の処理だと認識されてしまう。
数字の操作は当り前になり感覚が麻痺してしまう。新人は普通そうするものだと覚えてしまう。
断ると 「付き合いが悪い、石頭、融通が効かない、長年の付き合いでしょ。」
上司の指示に従って押し込もうとしているだけで悪気はありません。
数字を操作しているとか相手方は仕入れたら資産計上されて税金がかかってしまうとか、相手を都合のいいように使っているという意識はまったくありません。
双方の上司にしても意識はなく慣行でしているだけ。
ことによると上司の上の役員クラスもそういうもんだと思っている。
商品を預かっている間に(最初から返す予定の)商品に何かあったらどうするのか。
破損や変質を招いたら買わなければならない。最初から返す予定の商品を。
最初から返す予定の商品で倉庫の場所を取っている。倉庫の保管費はコスト。
預かり賃を請求しないのか。
相手の決算の数字合わせに協力して場所はタダで貸す。どこまでお人好しなのか。
自分たちがお人好しであることにも無意識。当然 悪気はありません。
押し込む方も最初から回収するつもりの商品を運賃をかけて運び、再び運賃をかけて回収する。
倉庫の作業経費も発生する。
売上達成万歳、運賃が無駄だとは言われない。数字を操作するための必要経費って項目あり?
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そんな無駄なことはやめましょう。モノは動かさずに伝票だけでやり取りしましょう。
モノが動かないのに伝票だけ動く。グッドアイデアだと担当者は悦に入った。(とんでもないことなのに)
今度は本当にモノも必要なのに伝票だけやってきた。
モノが来てないのに金を払えるか。
そんなはずはありません。モノも動いているはずです。
棚卸をやってみたら帳票記載よりも在庫が多かった。
伝票と在庫の異動が連動していなかった。
在庫が動く表伝票と在庫が動かない裏伝票が出来た。
営業が取り違えて倉庫と経理で訳が分からなくなる事態に陥った。
そんなことを繰り返しているうちに税務署がやってきた。アーメン。
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目標必達。ライバル他社よりも高い数字にチャレンジだ。
売上や利益や性能の数値を根拠も合理性もない数字に合わせることを必達目標にしたら、その先に待っているのは偽装です。
いくら上役が「俺が全責任を持つ」と言っても目の前にいるのは田中角栄ではありません。
言っている人が返すことが出来る金額なのか考えてみればわかります。
あなたの年収の100年分か。責任とれないじゃん。
「命をかける」と言っても目の前にいるのは坂本竜馬ではありません。
誰もあなたの命を狙わないって。
「君の仕事だ」というおだてに乗ると連座することになります。
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ボトムアップは罪をつくらないための手段。
罪にならない。或いは軽い処分で済む内に報告を上げるための手段です。
落伍者を出さない。いきなり論旨退職者を出さないための手段です。
早い内に報告をした方がよい。
しなくてもいいと思った報告をされて、そんなこと報告しなくてもいいからと言ったら顔色を伺って報告をしなくなります。
顔色を伺ってタイミングを測っている間に機を逃す。失念してしまう。
失念するぐらいなら大したことではないだろう。その決め付けは油断。
報告する側が重要性を認識していなくても重要なこともある。
人の失敗を嘲らない。
いけすかない人の失敗も嘲らない。
報告した人を恨まない。
事実の報告であり人格の否定はしない。
感情的、恣意的な措置、ハートのない措置が行われるとボトムアップは止まります。
それではまた。