オバマ大統領の広島訪問を受けて、安倍総理は真珠湾、南京に行くべきだという外交筋の意見が報道で見受けられます。
オバマ氏は「71年前のよく晴れた朝、空から死が降ってきて世界が変わった」
「ここ広島で世界は永遠に姿を変えてしまった」と述べています。
人類初の核兵器が使われた瞬間がこの世界の、全人類の歴史が変わった転換点であると述べています。
オバマ氏は世界に訴えるために広島を訪問したのです。
日本に謝罪するために訪れたのではない。日本が謝罪を求めたのでもない。
核廃絶という全人類的なテーマのために、核廃絶と核抑止力という矛盾に向き合っている人類の現実を示す象徴として広島の地に立った。
安倍総理は真珠湾、南京に行くべきだという意見は、オバマ大統領の広島訪問を謝罪と決めつけて、歴史的意義を理解せずに矮小化して捉えているのです。
オバマ氏の広島訪問が謝罪ということになれば、戦争をしたことのある国の首脳はすべからく被害を受けた地を訪問せよという話になり各国間で綱引き(政治的駆け引き)の元になりかねません。
そんなことがオバマ氏の本意のわけがないじゃん。
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欧米各国に日本は謝罪しない謝罪しないと言って回った東アジアのある国の首脳は共感を得られると思ったのだろうか。
欧米はアフリカ、中南米、アジアのほとんどの地域を植民地にしたという歴史があります。
日本が謝罪することに共感を示したら次は自分達に要求してくる。
共感を得るためには謝罪を求めないことを伝えるしかないというパラドックスを抱えています。
相手を謝らせて気分がいい?溜飲が下がった?
第一次世界大戦で(アメリカに助けてもらって)フランスは勝利し、戦後処理でドイツを徹底的に締め上げた。溜飲を下げた。
溜飲を下げた後で起きたことはさらなる惨劇(第二次世界大戦)でした。
謝罪をさせて溜飲を下げても後は虚しい。
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謝罪しない謝罪しないと言って回ってもスルーされるのはなぜか。
日本軍との戦いでライバルの国民党は弱体化した。
その日本軍もアメリカ軍との戦いで敗れ撤退した。
残ったのは弱体化した国民党。
漁夫の利を得た。
それなのに謝罪を求めることは自己否定ではないのかと思われている。
我々がアジアの歴史を知らないとでも思っているのかと。
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オバマ氏は最初の核兵器使用国アメリカ合衆国の現職の大統領として、最初の核兵器を使用した地、日本への謝罪のためではなく全人類の主題のために広島の地に立った。
「朝起きてすぐの子供たち笑顔、夫や妻とのテーブル越しの温かなふれあい、そして親からの温かな抱擁。」
「71年前の広島にもあったことを知る。亡くなった人は我々となんら変わらない人たちだった。」
投下国の首脳ならではの発言です。
「いつか、証言をしてくれる被爆者の声を聞くことができなくなる日が来る。しかし1945年8月6日の記憶は絶対に消えてはならない。この記憶によって我々は独りよがりではいられなくなる。」
これは日本人へのメッセージだ。
記憶を継承するのは日本人にほかならない。
記憶の継承が日本人の使命だと。
日本の記憶が核兵器の使用をためらわせる。
日本が、広島 長崎が復興しなければ資料は残らなかった。記憶は散逸した。
日本の記憶がなければ、紛争地域で核兵器が使用されていたかもしれない。
売名とかプロパガンダとか言ってる人たちはスルーしましょう。
それではまた。
(日本経済新聞 2016年5月28日 国際1面より抜粋)