信用を築くのには長い歳月を要します。しかし信用を失うのは一瞬です。
築地はもはや単なる地名ではなくなっている―ソフトは置き去りの移転騒動
施設が老朽化している。トラック輸送のアクセスに難がある。
豊洲に移転することで物流問題の解消が期待できます。(その筈でした)
今まではスペースが取れず、十分な荷さばき場を確保できなかった。
搬入する車両と搬出する車両が同じ駐車スペースを使っていたため大混雑が起きていた。
豊洲なら広い用地が確保できたことで搬入口と搬出口を分けることができて渋滞の解消になる。
豊洲新市場は閉鎖型の施設なので、温度管理もしっかりとできるから、商品を低温を保持したまま途切れることなく流通させる「コールドチェーン」が確立できる。
はずだった。
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予定通りに開場していたらどうなったか。
市場関係者の努力で、「築地ブランド」という付加価値が生まれた。
築地は国内外の耳目を集める存在となっていました。
豊洲推進派が都知事選で勝利して予定通りに開場した後で、汚染水の問題が発覚したら、豊洲、東京だけの問題では済まない。
NIPPONブランドに傷がついて日本全国が風評被害の巻き添えになる。
日本の食の海外展開に冷や水を浴びせることになる。
海外メディアにすっぱ抜かれたら目も当てられない。学者や専門家がどんなに安全だ、科学的に正しいと言っても世間に、世界に、スルーされる。
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市場移転計画で見逃された「築地」ブランド:日経ビジネスオンライン
(2016年10月12日)より抜粋
「築地市場は1935年に開設し、これまで80年以上にわたって生鮮食料品を東京のみならず全国に供給してきた。」
「築地市場の取り引き価格は全国の水産市場にも影響をおよぼす。日本国内の中心的な市場だ。」
「取り引き量の大きさと、取り引き価格の他市場への影響力に加え、2000年代以降は外国人観光客も増えていった。」
「築地市場の見学と食事やショッピングが東京観光の中でも大きな目玉へと成長していった。」
「2007年に欧米主要都市以外で初めて、ミシュランガイドが東京で発行されたのも、東京を訪れる外国人観光客の増加を象徴する出来事だ。こういった経緯を通じて、築地市場は日本国内だけでなく世界で通用するブランドになったと認識すべきだろう。」
「2000年代、外国人観光客の増加と時を同じくして海外での日本食ブームも世界各国の主要都市へ広がっていった。」
「増加する外国人観光客が帰国し、欧米の健康志向に支持された日本食ブームのけん引役となっていった。そういった動きの中心にあったのは築地市場だ。」
「外国人だけではなく、日本人も「築地」といえば、水産品に代表される食品を想像する。この消費者のも持つ「イメージ」こそ重要であり、市場移転でもっとも配慮すべき点であった。 」
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築地市場の豊洲への移転計画が進む中で発覚した土壌汚染の問題によって、豊洲市場は開業前から大きなハンデを負いました。
専門家が科学的に安全と宣言をしても必要条件に過ぎず十分条件にはならない。
ブランドは必要最低限では世間で世界で認められない。
ブランドは信仰だ、科学的根拠はない。それを言ったらおしまいです。
プロ用の道具は豊洲でも販売されるのか。
単に卸売市場を移すということでは、卸売市場で仕入れをした後に、必要な食材や器具を場外で買っていくという使い方ができなくなる。プロが使うような品は、一般の店では販売していない。
プロ用の食材や器具を扱う場外の店は築地と豊洲の両方に店を出すのは困難だから豊洲に移転するのだろう。
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築地市場を再整備する場合ー縮小均衡を目指すのか
築地市場の面積は23ヘクタールです。(豊洲は40ヘクタール)
衛生面の確保のため、閉鎖型施設にする。
商品を納入するバース・駐車場も確保したい。
構内通路も広くしたい。冷蔵庫も増やしたい。
一店あたりの面積を広げる、場内の通路を広くする、駐車スペースを十分に設ける。そのためにはセリや売買を行うスペースは平面では足りない。
セリ場を重層化する?(1階だけで行っていることを2階でも行う)
階段、スロープを設けて関係者が行き来する。開場している時間帯はエレベーターがひっきりなしに上昇下降を繰り返す。
エレベーター待ちで搬入、搬出が渋滞するのではないか。
平面移動のみの忙しさが立体移動になって混乱しないのか。
それとも
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豊洲は過剰施設にならないか(2017年5月22日追記)
面積が築地のほぼ2倍あるが、築地市場の取り扱い高は減少の一途を辿っている。
量販店、大手スーパーは市場を通さずに産地との直取引を進めていく。
築地の代わりだけでは将来オーバーサイズになる。複数の市場を統合していくことも考えていかなければならない。
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「豊洲で仕入れたマグロだ」と自慢できるか。
「今朝 築地で仕入れてきました。」「おおっ」
豊洲でこういう会話が成立するのか。
科学的に同じだ。と学者に力説されても人間はそんなに単純なものではない。
ベンツ、BMWはドイツ製じゃないと、何?南アフリカ製だって と言う日本人。
秋葉原に買い物に来たのに メイドインチャイナ と表記されていてがっかりされる日本人。
科学的に同じだ といくら言われても納得しない。人間の心の問題。
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HACCP取得について
専門家が安全と言ったから安全だ。
それを内輪のみならず対外的に認められるための手段がHACCPの取得です。
HACCP(ハサップ)(Hazard Analysis and Critical Control Point 危害分析にもとづく重要管理点(CCP)の管理)とは、食品の衛生状態を科学的に分析、管理するための手法のことで、食の安全性を高めるのはもちろんですが、食品の輸出にも結びつきます。
HACCP(ハサップ)とは:日本 | 貿易・投資相談Q&A - 国・地域別に見る - ジェトロ
留意点 1. 以下のケースについてはHACCP認定施設で製造された食品以外、輸出できません。
- EU向け水産品
- 米国向け水産食品
- 米国・カナダ・香港・EU・シンガポール向け食肉
アメリカや欧州に食品を輸出するためには当該国の法律に基づいたHACCP管理ができているかどうかのチェックを受けなくてはならない。
HACCPを取得できれば欧米に販路が広がる可能性があります。
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築地市場を建て直す。その工事期間中はどこで開場するのか。衛生を確保した上でそんな場所があるのか。
営業しながら工事をするという。オリンピック期間中も工事にかかるので付近は渋滞する。
専門家が安全と言ったから豊洲は安全なんだ。それではブランド力までは引き継げない。
風評を覆して安全宣言した上で豊洲ブランド構築を目指すのならHACCP取得を目指すのが道ではないか。
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人の口に戸は立てられません。
そこまでしなくてもいい、普通の市場でいい。
それではいつまでも風評がついて回ることになるだろう。市場を通さないで通販で、個人も小売も産地と直取引に、という流れを止められずに市場の衰退を招くだろう。
市場を通さない直取引は生産者への信頼と小売のバイヤーの目利き力が前提になります。
その信頼が損なわれるようなことが起きたら消費者は何を信じたらいいのかと混乱します。
ネット販売の画面の記載通りのものではなかった。期待外れだった。
会社の利益を考えて価格交渉して条件に見合う生産者から仕入れたが消費者のニーズとずれていた。
市場に期待される機能
目利きが品質と価値に見合った適正な価格を担保すること。
プロの料理人は自分が料理する素材を見ている。
プロの目利きは数多のプロの料理人が扱う素材を見ている。
風評によってその機能が損なわれようとしている。
消費者にとってもいいことではない。
それではまた。