(日本経済新聞 2017年10月15日 朝刊1面)
「日本の製造業に綻び」「現場任せ限界/問われる経営の力」
「(神戸製鋼所)川崎博也会長兼社長は自動車の軽量化で需要が増えるアルミで大増産の号令をかけた。だが工場の負担を緩和するような生産システムの導入はほとんどなく、頼みは現場のがんばりだった。」
「納期の遅れは許されない」。そんなプレッシャーが現場を追い詰める。…中略…疲弊した現場でデータの改ざんが繰り返されていた。」
「(日産)世界の全工場を統一の指標でベンチマークとし、効率の高さで目に見える成果を示す工場に生産車種を割り当てる。」
「社内で競わせるコンペはコスト削減で一定の成果を生む一方、副作用も生む。…中略…グループ内のクルマの取り合いは現場を疲弊させる。」
24車種 121万台 費用250億円以上のリコールに発展して、削減したコストは吹っ飛んだ。
(10月21日 3面)「日産、100億円減益も」
「米格付け大手のS&Pグローバル・レーティングは20日、「ブランド毀損による大幅な販売減や内部統制に深刻な欠陥がある場合は格付けへの影響を見直す可能性がある」と発表した。」
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(10月30日 5面)
「(神戸製鋼)結局、品質基準はタテマエということになり、「実用上問題がなければかまわない」という現場の勝手な裁量がまかり通ってしまった。
そのしわ寄せを受けたのが品質管理や検査部門だ。開発や営業部門と異なり、十分な人手や予算もなく、経営幹部とも距離が遠い。」
「検査部門が目をつぶれば会社全体がまるく収まる」という周囲の圧力が改ざんに手を染めさせたといえる。」
(10月25日 6面)
「昨年、燃費計測データの改ざんが発覚した三菱自動車の報告書(昨年8月公表)…
「不正をした部署は「無理な目標だ」と上層部に訴えたことが何度かあった。だが相手にされずに、ある時点で何も主張しなくなった。」
「(同部署)は周囲の無理解を利用して外から見えない壁をつくり始め、不正の手法をブラックボックス化していく」
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「無理です」と言うことはタブー(禁句)
無理ですと言うことは許されない、自分で考えろ、頑張れ、やればできる。
自分が同じ立場ならできたから言っている場合もあれば、できなかったのに言っている場合もあります。
できない理由がわかっていて(調べがついていて)発破をかけるために言っている場合もあれば、わからないのに言っている場合もあります。
風通しの悪い(風通しが悪いことに気が付いていない、風通しがいいと思い込んでいる)組織では後者が幅を利かせて事件に発展します。
組織とは他人事が自分事になる場所です。
事件になって評判が落ちて売上・利益が落ちて給料減るのも、ボーナス減るのも、クビになるのも、株主に訴えられるのも共同責任だから仕方がないなんて誰も思わないのに止められない。
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機械なら斟酌も忖度もホンネもタテマエもない
全世界・全工場で同じデータ、同じソフトで共通の基準で検査する。
鋼板等の素材は国内工場ではJISの基準に準拠したソフトで、自動車のように多くのパーツを組み合わせた製品は先ずは国内工場を共通基準のソフトにして、日本とEUで基準を統一できたら、国内とEU域内の工場をネットワークでつないでデータ、ソフトを共通化して自動検査ができるようにしたらいいのではないかと思った。
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不正のそもそもの原因は人手不足だった。
人手不足だったから人を増やす。それでは市況次第でまた人が足りなくなったり、余ったりします。
現行の制度に則って人手を確保しながらも並行して自動化も推進したほうがいいのではないか。
将来は人口減少で人手不足になることがわかっているのですから。
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RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
オフィスの作業を自動化するソフトウエア。データ入力など人手に頼っていた単純作業を自動的に処理することからロボットと呼ばれる。
(日本経済新聞 2017年9月3日 朝刊7面)
「事務作業も自動化進む」「「ロボ」ソフトで労働時間削減」
「第一生命 最大150人分代替 オリックス グループ全社対象」
「三菱東京UFJ銀行 30の業務で作業時間を5~10割削減。今後3年間で2000業務に拡大」(9月20日朝刊7面では9500人分の仕事自動化、国内従業員の約30%に相当)
記事では日本生命、NEC、住友林業、リクルートHDについても言及していました。
紙ベースのデータを光学式文字読み取り装置(OCR)で読み取って基幹システムに入力したり、ウェブの画面から数値をコピーしてエクセルにペーストしたり、人が目視しながらキータッチの速さを要求されてきた作業が自動化された。
「時間あたりの処理件数が人手に比べて8倍になり、ミスもなくなったという。」
オペレーターのキータッチミスで個人情報(名前の漢字の変換、住所、電話番号、生年月日)が間違えて登録されるという悲喜劇が解消されるということです。でも申込書に書いた字のクセがひどかったらロボットのアレゴリズムで読み取った通りに登録されるのだろう。
申込書にはきれいな字ではなくても誰でも読める字で書きましょう。
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サムライ業も自動化(AI化)の対象
(9月25日 朝刊13面)
AIによる代替可能性
弁護士 1.4%、司法書士 78.0%、弁理士 92.1%、行政書士 93.1%、公認会計士 85.9%、税理士 92.5%、社会保険労務士 79.7%、中小企業診断士 0.2%
弁理士 特許出願は出願者との複雑な共同作業が伴うのでAIでは難しい、商標出願がAI化
司法書士の登記、行政書士の許認可の書類の作成、税理士の確定申告、公認会計士の決算書類は定型的であるためAI代替の可能性が高い。
仕事を取られる前に自らAIを導入して料金を下げて顧客を獲得する。(他の事務所から顧客を奪う) 業務を委託する顧客企業にとっては朗報。
定型的な業務の料金が下がる、中小企業経営者に事業の継承(資産の継承)、事業の譲渡の指南というコンサルタント業で活路を拓く。
難関を突破して資格を取得したサムライ(士)もAIの登場で業界は様変わりの様相です。
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かつては機械のように正確な作業をする人は重宝された。
今は機械にとって代わられる。
かつては機械的に仕事をする機械のように忠実な人は重宝された。
太鼓持ちとか融通が利かないとか揶揄されながらも重宝された。
今後は機械にとって代わられるんじゃないか。裏切らないから。
それではまた。