聞き逃しや認識違いが原因ではない理由
JR東海は 新大阪駅での引き継ぎでJR西日本から 異常なし と報告を受けているので保守担当社員は乗車していません。なので保守担当社員からの提案はありえません。
JR東海の輸送指令は保守担当社員からの提案がなくても 停止、床下点検の判断ができた。
なので保守社員の提案があってもなくても関係なかった。提案が聞こえても聞こえなくても関係なかった。
それなのにJR西日本は記者会見で「保守担当からの提案を聞き逃していた」という周回遅れの話をする。
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(日本経済新聞 2017年12月28日朝刊3面)
「床下点検聞き逃す」「JR西社長が謝罪」
「現場の保守担当が床下点検を提案したが東京の司令員が聞き逃していたと明らかにした」
「司令員は隣にいる上司の問い合わせに応じるため受話器を耳から離し、この提案(床下点検)を聞いていなかったという。」
受話器から耳を離して聞いてなかった? 記者会見は紛糾しなかったのだろうか。なんだそれは! って
艦隊の司令官が「敵艦見ゆ」を聞いてなかった。
手術中の医師が「心拍数低下」を聞いてなかった。
記者が取材相手のネタになる発言を聞き逃した。
冗談ではないという話になるのではないか。
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なぜ JR西日本の乗務員は JR東海の乗務員に「異常なし」と引き継ぎをしたのか?
(37面より)
「博多駅を出た直後の午後1時35分ごろ、車掌が13号車で甲高い音を聞いた。」
「聞き取りの結果、これまで明らかになっていなかった床下からの「ビリビリと伝わる振動」を保守担当が感じていたことが明らかに。」
「異常の兆候は計30回に及び、10回以上は後に台車で亀裂が見つかった13号車の近くで起きていた。」
それなのに新大阪駅での引き継ぎで 異常なし とJR東海に引き継いだ。
司令員が問題ないと判断したのに、乗務員が 異常あり と引き継ぎを行ったら、話の辻褄が合わなくなるからと話を合わせたのか、口裏を合わせたのか。
(そんなことありえないよ)
口裏合わせをしていた方がまだまし
(どうして?)
乗務員が異音、異臭、車内の もや が異常ではないという判断を自発的に行うのなら人間として感覚が麻痺している。新大阪から先はこわくて乗れない。姫路に行くときは新大阪から新快速に乗り換える。広島に行くときは飛行機で行く。
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(3面より)
「JR西では運行停止の基準があいまいだったが、今回の事態を受け異常時の行動基準を見直した。」
「運行停止の判断材料に異音のほか、異臭や振動なども加える。その上で車掌や保守担当ら現場の意見を最優先させることを明確にした。」
マニュアルに書いてないことは対応できなかったのでマニュアルに今回の事例を踏まえて追加した、しかしトラブルはマニュアル通りに起きてはくれない、マニュアルに書いてなかったから対応できなかったという話を今後も聞かされるおそれがある。
なぜ がない組織は マニュアルに書いてないことには対処できない。
だからどんどんマニュアルが厚くなって全貌を把握できる人がいなくなり、対策が掛け声倒れになる。
書いてないことに直面した時に対応する手段がトヨタの「なぜ を5回繰り返せ」なのではないか。
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現場の意見を最優先させることを明確にした。とはどういうことか。
事後報告でもよいということか、そこのところが書いてないのでよくわからない。事前に確認を求めるのであれば今までと変わらないことになる。
今回の事例に当て嵌めれば、保守担当が新大阪で床下点検をすると連絡をしたら、司令員はそれに合わせて関係各署の調整をする役割を担い、保守担当の判断に介入しないと明記されなければ、現場は司令員の判断先送りに付き合わされることになる。
指令員が保守担当の提案を聞き逃した場合、保守担当の判断が優先されることが明記されないと今までと同じことになる。
本当にいいのか。
現場の判断が最優先と明記されても掛け声倒れになるのではないか。
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現場の判断が最優先とは明記しないJR東海
「すでにJR東海は煙や異臭に気付いた場合、車掌や指令員は情報を共有するよう定めている」
今回のトラブル以前からルールが定められていた。
現場の判断が最優先と明記はされていない。
輸送指令が責任を持って判断をする。権限=責任
現場が最優先と明記すれば恰好はつくが、そんなことを明記しても掛け声倒れになることを知っているからではないか。
権限があるのに責任を果たさない、責任を果たすために権限を使わない。それでは船頭多くして船山に登ることになる。
JR西日本は権限も責任もあいまいだから指令は判断できなかったのではないか。
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判断のタイミングで立場は入れ替わります―最悪の事態を想像できるかできないかの違い
前回、結果的にJR西日本の経営陣もJR東海の輸送指令に救われたのではないか。
それなのに、「運行前の車輛の点検はJR東海が行った」と人のせいにする発言をする。(NHK ニュース)
と書きました。
しかし、
12月11日 のぞみ34号トラブル
1333 博多駅出発
1350 小倉駅出発 乗務員が「焦げた臭いがする」と報告
13号車の乗客が「もやがかかっている」と申告、車掌も確認
小倉駅出発後、新下関~広島で運行を止める判断をしていたら、「運行前の車輛の点検はJR東海が行った」という発言をしても正当化されます。
判断の先送りをして、JR東海に判断を委ねたために批判を受ける立場になりました。
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安全が何よりも優先すべきだと誓っても、なぜ伝わらないのか
誓う は精神論だからです。
「JR西日本は宝塚線の事故後「安全性向上計画」をつくり、安全が何よりも優先すべきだと誓った。」(2017年12月20日朝日新聞 朝刊14面社説)
誓うとはどういう意味か
実行を固く約束する。心の中で固く決意することを指します。
誓ったらトラブルはなくなるのか、誓ったところでどうすればいいのか。
屁理屈を言うな、ふざけるな、そんなことは聞くな、そんなことは自分で考えろ、わかって当り前だ、そんなこともわからないのか、気合いが足りない、お客様のことを考えていれば自ずとわかるはずだ、真剣さが足りない、まじめにやれ。
って怒りだす人はどうすればいいのかわからないので精神論に終始します。
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安全第一とは
「ヤバイと思ったらすぐ停めろ、我慢するな、頑張るな、遅延でお客に怒られるのと、お客を殺すのとどっちを選ぶのか、後者はありえないだろ、人間じゃないだろ、殺したら可能性が消えるんだ。」
バイアスが躊躇を生む
「車輛のやり繰りはどうしよう。遅延で特急料金の返金になったらどうしよう。お客に乗務員・駅員が怒られたらどうしよう。停めて杞憂に終わったら上役に説明を求められる。」
躊躇を生むバイアス「どうするんだ、説明しろ」を取り除かなければ「安全第一」は空文に終る。
「車輛のやり繰りはどうするんだ。遅延で特急料金の返金になったらどうするんだ。お客に乗務員・駅員が怒られたらどうするんだ。停めたが杞憂だったじゃないか、どうするんだ。」
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どうして日産で不正検査が行われて、トヨタで不正検査が行われなかったのか
ラインで不良が発見されたとき、すぐにそれを全ラインに知らせる「ランプ(あんどん)」が点灯されて、ライン全体がストップする。(トヨタあんどん方式)
直ちに原因の究明と再発防止策が打たれる。(なぜ を5回繰り返す)
再発がされないと確証されるまで、ラインを再稼働しない。
全ラインが止まることで莫大な損害が出るが、再発させると最悪の場合「再起不能になる」危険がある。と
逸脱をしたら大きな代償を払うことになることを知っていた。
一方は再発防止策が立てられないうちに「再稼働」してしまった。最悪のことを考えるなんてとんでもない、縁起でもない、そんな大ごとになるとは思っていなかったのではないか。
なぜか?
切り詰めが逸脱して「ケチる」状態になっていたのではないか。
社内グループの他の工場と生産車種の取り合いをしていた。コストで負けるわけにはいかない。社内での激しい競争に勝つために口を差し挟むのはタブー。モノ申す(本当の意味でやる気がある)のは空気が読めてない面倒くさい変な人。
組織によって やる気 の定義が異なる。
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「やる気」の定義が異なるのは想像力の違い
最悪の事態を想像できるかできないか。
最悪の事態を想像できたら、停める判断が杞憂であったとしても責めない。
責めたら次に判断を求められる事態に直面したときに躊躇するから。
危機に強い組織は躊躇による判断の遅れが致命傷になりかねないと想像できるから躊躇をさせる要因を予め排除してある。
危機に弱い組織は躊躇による判断の遅れが致命傷になりかねないと想像できないから躊躇をさせる要因を予め排除していない。
そこが明暗を分けたのではないか。
それではまた来年。