nikoichixのブログ

新聞やテレビ、本を見て思ったことを綴っています。書いてみたらこんな展開になるとは思わなかった。まいっか。

何が仕事を他人事にさせるのか―日産完成車検査不正再発覚―グローバル化と国内ルールの狭間で体制に与える影響

日本経済新聞2018年7月10日朝刊3面)

「燃費・排ガス試験で測定する際の条件を満たしていないにもかかわらず試験を有効としたり書き換えたりしており、昨年発覚した無資格の従業員による不正検査に続く不祥事だ」

「2017年9月18日 国土交通省が日産の湘南工場を検査し、無資格者による完成検査が発覚

10月13日 湘南工場で無資格検査が続いていたことが発覚

10月19日 追浜など3工場でも無資格検査が続いていたことが発覚。全6工場の国内向けの出荷を停止」

 

輸出先は日本と同様の検査を求めていないので違反にはならないという判断で海外向けの出荷は停止しない。ルノーとの連合でグローバル基準に染まっていたから違和感を覚えずに国内向けと輸出向けを区別しないで続けてしまったのか?

海外メーカー、外国政府からは日本市場の閉鎖性として交渉のネタにされるおそれがある。だから神経質になるのか。(誰が?)

 

「11月7日 出荷を順次再開

12月22日 国交省が日産本社に立ち入り検査

2018年3月26日 国交省が日産に業務改善指示などの処分

今年1~6月には小型車「ノート」が軽自動車を除く車種別の国内販売で48年ぶりに首位となった。悪化したブランドの回復にめどがつきかけた矢先の不正の上塗り。国内販売への影響は長期化するとの見方は強い。」

 

1970年以来の販売トップです。

 

当時はサニー、ブルーバードがトヨタカローラ、コロナと熾烈な販売競争を繰り広げていました。

昨今は軽自動車を除けばトヨタプリウス、アクア、シエンタ、ボクシィ、ホンダのフィット、フリードが販売上位の常連です。そこへ日産がeパワー(エンジンは専ら発電しモーターは専ら駆動する運転の新感覚を提供する魅力・電気自動車のように充電の心配もなく、モーターとエンジン駆動の切替えや並列駆動(モーターとエンジンの両方で駆動)といった複雑な制御が必要なハイブリッドとは異なるので新興国での生産も早期に実現が見込まれる)で割って入ったところで冷や水を浴びせかけるような不祥事になってしまった。 残念。

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フランス政府はルノーに日産を吸収させたい

日本経済新聞6月19日朝刊2面)

「仏経済・財務相ルメールマクロン大統領の腹心)「国家が介入してでも労働者を守る」

フランス国内工場の閉鎖や人員削減は政府が筆頭株主として反対する。経営に関与するという意思表示です。

 

雇用は経済成長より優先するということになります。

雇用なくして経済成長はないという。

ルノーにとって仏政府は15%の株式を持つ筆頭株主。その意向、マクロン政権の物言いには逆らえない。」

社会主義的政策を株式の保有という資本主義的手段によって実行する。マクロン政権は資本社会主義という政治体制なのか、日本の野党がマネしたりして。

 

「仏政府はゴーンが将来、去った後も3社連合が永続できるのかを懸念し、日産との合併を求めてきた。」

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仏フロランジュ法

 

2014年成立 株式を2年以上保有する株主の議決権を2倍に増やす。

 

一時的に大量保有してモノ言う株主として一時的に株価が上がる施策をさせて売り逃げするハゲタカな行為は許さない、モノ言うなら長期保有して下さい。ということか。

仏政府のルノー株の保有率は15%ですが議決権は30%あるということです。

でも1株1議決権という資本主義の根幹が揺らいでしまった。

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警戒する日産

 

日本経済新聞6月17日朝刊7面)

ルノーから1999年に出資を受け入れて経営危機から脱したが、その後の連合の世界販売の拡大などは日産が主導してきたという自負がある。」

 

ルノーの日産への出資比率は約43%、日産のルノーへの出資比率は15%

日産がルノーの子会社になったらフランス政府が雇用対策でフランスに日産の工場を作れとか経営介入してきたりして日仏政府間の議題になりかねない。

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発言権を守るために内部固めが必要

 

不正を隠したら企業内統治ができていないということになり、連合内での発言権を損なうから隠すという選択肢はありえない。

隠した揚句発覚したら信用がた落ちで連合内での発言権を失う。

 

でも、より発言権を強めるためには不正もなく業績がよいに越したことはない。

それなのに国内基準に則った検査が行われていなかった。

他社はルールはルールとして国内向けと海外向けを区別して検査ができていたのに、なぜ日産はできていなかったのか。

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どこか他人事になっているのではないか―社是を比較してみた

 

https://www.nissan.co.jp/CORPORATE/TOP/

https://www.nissan-global.com/JP/COMPANY/DIVERSITY/

ダイバーシティ=『多様性』。それは、新しい価値を生み出します。

人にはさまざまな個性があります。国籍、文化、年齢、性別、性自認性的指向、学歴、仕事歴、ライフスタイルなどさまざまな背景からなる個々の人々の考え方や価値観は、まさに多様です。

日産はこうした『多様性』が会社の強みになると信じています。なぜなら、いろいろな考え方を持つ人たちが、多様な意見を出し合い、ぶつかりながら模索するほうが、はるかに発展的・創造的なアイデアが生まれるからです

 

hpに基本理念 社是というのが見当たらないので従業員に関する項目を探したら多様性を重視するという。おっしゃることごもっともですという感想しか出て来ない。

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ライバル社のhpではどうなのか

http://www.honda.co.jp/guide/philosophy/

ホンダのhpから抜粋

基本理念

人間尊重

自立

自立とは、既成概念にとらわれず自由に発想し、自らの信念にもとづき主体性を持って行動し、その結果について責任を持つことです。

 

平等

平等とは、お互いに個人の違いを認めあい尊重することです。また、意欲のある人には個人の属性(国籍、性別、学歴など)にかかわりなく、等しく機会が与えられることでもあります。

 

信頼

信頼とは、一人ひとりがお互いを認めあい、足らざるところを補いあい、誠意を尽くして自らの役割を果たすことから生まれます。 Hondaは、ともに働く一人ひとりが常にお互いを信頼しあえる関係でありたいと考えます。

 

三つの喜び

 

買う喜び

Hondaの商品やサービスを通じて、お客様の満足にとどまらない、共鳴や感動を覚えていただくことです。

 

売る喜び

価値ある商品と心のこもった応対・サービスで得られたお客様との信頼関係により、販売やサービスに携わる人が、誇りと喜びを持つことができるということです。

 

創る喜び

お客様や販売店様に喜んでいただくために、その期待を上回る価値の高い商品やサービスをつくり出すことです。

 

町工場のバラックからスタートして日産は遥か頭上の彼方にある頃に具体的な言葉で理想を掲げていた(創業者 本田宗一郎が語っていた)。力及ばずの頃には揶揄もされていたのだろう。よく言うよとか。

 

変なメンツに拘らないからまたかよと揶揄されながらもフィットを5回もリコールできた。

三菱自動車は名門の沽券に関わると考えたのかリコール隠しで信用を失墜させた。

リコール費用は多額でもリコール隠しの損失はその比ではなかった。

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従業員の忠誠心、コンプライアンス意識が足りない、仕事がどこか他人事だと嘆く

 

なぜそういうことになるのか。

「何のために働くのか」という根本的なところが確認し合えていないからではないか。

何のために働くのか、お客様第一とか会社のためとか和が大事とか建前のお題目を唱えられても他人事で自分には関係ない、関心が持てない。

当たらず騒がず祟りなしになってしまうのではないか。

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トヨタ 現場の「オヤジ」たち (新潮新書)

トヨタ 現場の「オヤジ」たち (新潮新書)

 

 

教えていないことを「おまえこんなこともできないのか」と絶対に言ってはダメ

 

この野郎 そんなこと言ったって俺は知るわけないじゃないか、できるわけないだろう。と頭に来た、だから自分が教える側に立ってからは「教えたことのないことで作業者を叱るな」と徹底した。

 

アメリカ人はアンドンを引かない

「アンドンとはトヨタ生産方式のひとつで、何かあったら作業員がヒモを引いてラインを止めるんです。不良品が出ないようにその場で直す。」

不良品を出したら、後の工程で直すのは困難になり手間がかかる、出荷されたら営業、広報マスコミ 程度や場合によっては経営陣も国も巻き込み、販売店、顧客に影響が広がり、信用が損なわれ、その被害損害は計り知れない。

 

ラインを止めたら製造コストが上がるから絶対止めるなとケチると却って多額の損害を抱えることになる。

「ところがアメリカでは現場の人間がラインを止めるとクビになるんです。だからなかなかアンドンを引こうとしない。」

 

社員の主体性を認めない、仕事を他人事にすることを強要されて現場が無関心になり消費者の信用を失い、アメリカの消費者は日本車などの外国ブランドを選ぶようになった。

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恰好つけたり気取ってる場合じゃない ということか

 

http://www.suzuki.co.jp/corporate/message/conduct.html

スズキhp スズキグループ行動指針から抜粋

 

働きやすい職場環境のために

(3)人権の尊重

スズキグループは、各国・各地域の法令を踏まえ、人権に関する様々な国際規範を理解し、基本的人権を尊重します。

  • 私たちは、スズキグループの一員として互いに協力して、個人の属性による差別やハラスメント(嫌がらせ・いじめ)の無い、全ての社員が働きやすい職場づくりに努めます。

(4)労働安全・交通安全

スズキグループは、職場環境を整備し、安全な職場づくりに努めます。スズキグループは、労働災害を発生させないための安全教育を徹底します。

  • 私たちは、安全に関する規則を遵守し、安全な職場の維持や労働災害の防止に努めます。
  • 私たちは、職場において安全に関わる問題を発見した場合、直ちに上司に報告して改善に繋げます。
  • 私たちは、一人ひとりが自動車産業に携わる者であることに自覚を持ち、交通ルールを遵守し、社会の模範となる運転を心掛け、職務上であれ私用であれ、交通事故防止に努めます。

(5)改善活動の推進と仕事の基本ルール遵守

スズキグループは、社員による職場改善のための創意工夫を奨励します。 社員からの改善提案は、評価して有効なものは採択し、横展開してグループ全体の発展に繋げます。 スズキグループは、仕事の基本ルールを策定し、社員に徹底します。

  • 私たちは、日頃から自らの業務について真剣に考え、率先して行動するとともに、改善点に気付いた時には、会社に提案します。
  • 私たちは、職場での意思の疎通を徹底し、確実に相手に伝わるまで繰り返しコミュニケーションを図ります。
  • 私たちは、常に全体最適を意識して部門/会社間での情報共有に努めます。
  • 私たちは、職場毎に定められた仕事のルールも遵守します。

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注目したのは3つのポイント

 

「ハラスメント(嫌がらせ・いじめ)の無い、全ての社員が働きやすい職場づくりに努めます。」

衒いもなくハラスメント撲滅を具体的に宣言しています。

恰好つけたり気取ってる場合じゃないと堂々と宣言するということです。

 

「私たちは、職場において安全に関わる問題を発見した場合、直ちに上司に報告して改善に繋げます。」

具体的に掲げることで“見ざる聞かざる言わざる”を撲滅する。

上司も担当役員も黙殺してはならないという経営意思を掲げています。

 

「私たちは、常に全体最適を意識して部門/会社間での情報共有に努めます。」

部門の都合 部分最適で仕事をするなという経営意識の浸透を計っています。

 

そんなこと当たり前じゃないか、わざわざ宣言するようなことかと恰好をつけて木で鼻を括ることをしない。

具体的に提示しないと人間は流されてしまうという洞察があると思う。

 

※燃費不正問題(国が決めた方法で計測していなかった)で国の基準で計測をやり直したら、三菱は社内基準よりも国の基準の方が厳しかった、つまり燃費の数値が悪化したが、スズキの場合は国の基準よりもスズキの基準の方が厳しかった、燃費の数値がよくなった。というオチがつきました。

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ゴーン氏の任期は2022年まで

 

トヨタ、ホンダ、スズキといった遠江三河発祥の企業に較べると日産のhpは書いてあることがスマートです、綺麗です、泥臭さゼロです。

さすが おグローバル企業というイヤミな言葉が思わず出てしまいました。

 

このままでは発言権を失うという危機感があるのだろうか

 

でも気取ってる場合じゃなくなった。

他人事意識 見ざる言わざる聞かざる流される を払拭しないと連合の中で発言権を損なってゴーン氏が去った後は おフランス政府のコントロールを受ける立場に陥りかねない。

経営陣が、ファンが、マスコミが反発しても社員からもユーザーからも他人事感覚でなったらなったでそれでもいい、しょうがないと思う人が出るのではないか。

 

シートはルノーがいいけど。

ルノーのシートは座り心地がいいんです。)

 

 

それではまた。