※文中敬称略
※参議院の選挙区は都道府県別で比例代表制の導入は1982年、衆議院は1997年です。小選挙区は衆議院のことです。
政治倫理の大号令の下 小選挙区制は制定された
広い選挙地盤を隈なく維持、選挙運動をしていくのには金がかかる。金がかかるから金権政治になる。クリーンな政治を目指すべきだ、それが正義だ、反対するのは抵抗勢力だ。
反対する人は改革に反対する守旧派ということになり、反対できない空気に支配されて小選挙区制と比例代表制は制定されました。
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実は独裁を生みやすい小選挙区制
上州戦争はもう起こらない
同じ選挙区から 福田赳夫、中曽根康弘、小渕恵三、3人の総理を輩出した中選挙区制の群馬三区、同じ時代に3人が競い合いました。こんな選挙はもう見られない。
かつて自民党総裁選で 梶山静六、小渕恵三、小泉純一郎が競ったときに 田中真紀子は軍人凡人変人と評しました。
一位 福田赳夫、二位 中曽根康弘は不動で、三位と四位と当落を競い合う 小渕恵三、こんな選挙を続けられるとはなんて折れない人なんだ、凡人のわけないでしょと思った。
同じ選挙区の中で当選枠の多い中選挙区制は党の公認がなくても、党の外の仲間や支援者の支持で党の言いなりにならない一家言ある人も当選できていた。
党の公認がない非主流派の当選者がいることで論争が活発になり緊張感が保たれていたのではないか。
派閥争いはみっともない、一致団結するべきだ。それは呑気な考えだった。
一致団結とは悪く言えばモノが言えないという場合も含まれている。
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党の公認を得られなければ当選できない小選挙区制
金がかからなくなった代わりに当選枠の小さくなった小選挙区では、執行部の意向に沿わない候補を公認しないで、その選挙区には党公認の候補を送り込まれるので執行部に逆らえないということになりました。
クリーンにしたら緊張感がなくなるという別の腐敗要因を生み出すことになってしまいました。
クリーンにしたら緊張感がなくなって腐敗要因になる。なんて皮肉なことでしょう。
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裸の王様は望んでなるのではなく自然になっていく
「自民党の幹部も中堅も、誰もあなたに問題だと言わない。正直言って、みんなあなたのご機嫌とりしか考えていない。あなたの機嫌が悪くなるのを怖がっている。それは要するに、日本をどうすればいいか考えていないということだ。こんな無責任な自民党でいいのか」
そう問う私に、安倍は「本当に困った問題だ」と応じた。
福田「前の会社で常務のときからお仕えしていた方がとってもいい方で、人の話をよく聞くし、まじめ。
でも社長になってから周りの方々がブロックし始めるんですよ。だんだん祭り上げていって、いいことしか基本的に言わない。…」
誰も怖くて言わなくなるという。
「…要するに「裸の王様」って望んでなるんじゃなくて、どんどん自然になっていく。総理秘書官になったときも、親父に対して母と僕の二人だけは、親父の耳に障ることを言うのが役割なんだと思っていた。」
※福田康夫首相の秘書官時代の話
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ヒトラー・ナチス政権を生んでしまったドイツは小選挙区制と比例代表制
ヒトラーのナチス党は小選挙区制と比例代表制を利用して党勢を広げた。
半藤「…この選挙制度はよくないといくら言ってもダメでしたね。ここを当時の日本人はあまり論じなかった。」
池上「あのとき、「政治改革」が正義でそれに反対するのは「守旧派」あるいは「抵抗勢力」とレッテルを貼られた。「改革に反対する者たち」と括られて。」
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戦前の日本は二大政党だったが戦争に突き進んだ
イギリスやアメリカのように二大政党で政権交代があった方がいい。
でも戦前の日本は民政党と政友会の二大政党でした。
野党になった方は、ときの政権をひっくり返そうと画策します。
半藤「昭和初期に政友会と結びついたのが軍部と右翼でした。…軍部は政友会を利用しつつ好き勝手をはじめてこの国を戦争に向かわせることになるんです。」
軍部と結び付いた野党が政府を弱腰批判して強気の発言しかできない空気になり、戦争に突き進んだ。
今は軍部はないが、外国で機能しているからと言って、それを持ってきたら日本に当て嵌まるとは言えないということは心に留めておく問題です。
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政治主導にしたら却って役人の緊張感が失われたのではないか
人事権を握られて意向に逆らえない。
緊張感の向く先が仕事からお上になって、先読みして歓心を買うことを考えて先走りした行動を取ったり、理想に燃えて国家像を描くのは役人のやることではない、政治家のすることだとスポイルされて、主体的にやる気を失って仕事が他人事になったりして不祥事に繋がっているのではないか。
選挙で選ばれた政治家、選挙で選ばれてない役人、選挙で選ばれたから民意だと言って押さえつけても納得していない現場が円滑に動くとは思えない。
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ドイツの参議院は「選挙なし」「任期なし」
ドイツ基本法第51条
- 連邦参議院は、州政府が任免する州政府の構成員をもって組織する。これらの者は州政府のその他の構成員が代理することができる。
- 各州は、少なくとも3票、人口200万以上を有する州は4票、人口600万を有する州は5票、人口700万以上の州は6票の評決権を有する。
- 各州は、票数と同数の代議員を送ることができる。州の表決は、統一的にのみ且つ出席した代議員または代理人によってのみ、これを行うことができる。
日本の参議院が選挙で選ばれるのはアメリカの上院に倣っているが、ドイツの参議院議員は選挙で選ばれない。(イギリスの貴族院は世襲制)
選挙ではなく地方の自治政府が人口に応じて定められた議席数の代表者を派遣します。
審議の対象は基本法の改正法案や州に関する法案で、すべての法案を審議するわけではないので、参議院の審議対象以外の法案は衆議院のみで決議されます。
69名という定数は決まっていますが、議員は州政府の任命で随時入れ替わっていくため任期も特に決まっていません。
投票で選ばれた議員の決議をまた別の投票で選ばれた議員で決議する意味はないということか。
有権者は衆議院選挙でしっかり選んでください。上がって来た法案は地方政府の代理人がチェックしますということです。
参議院の審議対象にならない法案は衆議院だけで決まるので、選挙の時しっかり選んでくださいということです。
その方が関心が高まって投票率が上がるのではないか。
ドイツの州は16です。日本の場合、48都道府県から代理人を派遣していたら、今と同じ248人になるだろうから人数を絞ろうとしたら北海道、東北、関東、近畿、中国、九州は2つ 中部は3つに分けて四国と沖縄に分ければ17になる。
(分け方でもめそう、中部は(信濃・甲斐・伊豆・駿河・遠江) (三河・尾張・美濃・飛騨)、 (越後・越中・加賀・能登・越前・若狭)最大の抵抗勢力は選挙ではなく地方から派遣されることになって議席を失う参議院議員だったりして。)
※国土面積 日本 37万8千k㎡、ドイツ 35万7千k㎡
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国民投票は悪く言えば有権者に丸投げ
民意を問うべし、国民投票を実施すべきだ。という美辞麗句はよく聞く話です。
それでは一体何の為に議員を選挙で選ぶのか。
もし議員が言ってしまったら自己否定ではないか。
投票結果を踏まえた実行プランもないまま、とにかく投票を実施して投票結果が出てから考えよう。
つき合わされる国民はたまったものではない。
投票結果がどちらになっても実行するプランがないまま、国民投票を実施して投票結果が出てから考えようでは混乱が待っているのは必然です。
イギリスのEU離脱を問う国民投票を実施した当時の政権は離脱反対が勝つとタカを括っていました。蓋を開けたら賛成多数で当てが外れて、賛成多数の場合のプランがなかったため退陣する羽目になりました。
その煽りを食うのは国民です。
投票結果を踏まえた実行プランもないのに国民投票を実施するものではないと思った。
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政治の世界の空気が国民生活に反映しているのではないか
小選挙区制、比例代表制になってから党にモノが言えなくなった政界、そんな空気がお役所も民間も教育現場も覆っている。
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民意を問う、金がかからない選挙、美辞麗句は反論を封じる毒にもなる。
それではまた。