nikoichixのブログ

新聞やテレビ、本を見て思ったことを綴っています。書いてみたらこんな展開になるとは思わなかった。まいっか。

天気の子―最初から晴れなくていいとは言えない―夏の雪という舞台装置

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ビッグマックが取り持つ縁

 

http://www.mcdonalds.co.jp/menu/

毎晩飲み物だけ注文する少年よ、何を飲んでいるのか、マックにスープはないぞ、野菜生活か、Sサイズで150円、コンビニなら110円、金がないのにコスパ悪いぞ、コンビニで買って漫画喫茶に持ち帰ったほうがいいぞ。

コカコーラ、スプライト、ファンタ、爽健美茶Sサイズなら100円だけどいいのか、寝る前に冷えるぞ、せめてホットティーにした方がいいぞ。


どう見たって普通の生活をしている学生じゃない、家出少年だ、毎晩それじゃ体によくないぞ、と少女は少年にビッグマックを贈る。

母を亡くし、弟と二人で生活していくために年齢を偽ってバイトをしているのに、自分のバイト代から ひもじい少年にビッグマックを贈る。自分だってやりくりが苦しいのに、なんという優しさ、弱い者をいたわる心、ここで参ってしまった。

(爪の垢でも煎じて飲んでください)

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義侠心

 

正義を重んじて、強い者をくじき、弱い者を助けること。おとこだて。

これだけでは任侠映画の世界になってしまう。でも男だけではなく女もそういう人はいます。

強い者をくじく力はなくても、不正に付和雷同で流されない、弱い者をいたわる心のある人はいる。

(対抗して悪知恵合戦始める誰かさんとは違うね)

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ビッグマックをくれた少女が黒服に手をひかれて「大丈夫だよ、簡単な仕事だって」「ちょとだけ試してみようよ、今日からお給料出せるよ」とか言われてる

 

怪しさプンプン、ヤバイヤバイ、大丈夫なわけがない。

黒服ヤバそう、あっち系かも、見て見ぬふりをする、見なかったことにする。

それって義侠心がない、恩知らず、腐ってる。

 

行け 行け 帆高、

行ったけど悪をくじく力はなくボコられてしまいます。助けてくれる人はいません。

周到に仕掛けられた舞台装置が発火して帆高と陽菜は窮地を脱します。

疲れ果ててビルの入り口でうたた寝していた帆高を黒服は邪見に扱い、おとなしく立ち去ろうとする帆高の足をひっかけて転ばせた勢いで散乱させたゴミ箱の中身に例の銃があったのだから因果が巡ったともいえる。

(帆高も黒服もお互いに運がよかったね。)

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行け行け須賀圭介

 

「お前さ、もううちに来ないでくれよ。このままじゃ俺が誘拐犯になっちまう。」

「…娘をあっちの両親に取られちまって、今、交渉してんだよ。社会的評価とかが大事でさ。今、微妙な時期なんだよ。」

娘を引き取るためには警察と面倒は起こせない。

「もう大人になれよ、少年。」

大人になれよ 帆高 とは言わない。知らない間柄になろうとしている。もうこれきりだと餞別を渡します。これで島の実家に帰ってくれと。

 

でもその餞別が3人の逃避行の資金になります。退職金出たからさ とか言って一晩の宿泊費とHOTスナックに換わり、凍えと逃避行の疲れの癒しになります。

手切れ金が癒しの元手になるというパラドックス

 

何という憎い仕掛けだろう。

 

焼きそばうまっ、タコ焼きうまっ、カレーうまっ、カップヌードルが二分でアルデンテだって。

カレーに唐揚げを入れて唐揚げカレーにして「うますぎるよ、大発明だよ」だって。

カラオケで「恋するフォーチュンクッキー」「恋」だって。

うらやましいぞ。

(大丈夫か、おっさん)

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廃ビルで須賀圭介の待ち伏せに遭う

 

廃ビルの屋上から空にいる陽菜のところに行こうとする帆高の前に須賀圭介が立ちはだかります。

「探したぜ 帆高」

「空になんているわけないだろ?」

帆高の腕を掴み、頬を張り、抵抗する帆高の腹を蹴る。須賀に邪魔されている間に警察が駆けつける。

須賀には須賀の事情がある。娘と暮らすんだ、邪魔をするな と。

 

それは帆高も同じです。「俺はただ、もう一度あの人に逢いたいんだ。」

自分と同じだ。家出をして東京であすかと出会った、 (劇中では事故で亡くなったと語られる)あすか にもう一度逢いたい。

走り出した帆高は刑事に襟首をつかまれ馬乗りにされ手錠をかけられます。「確保!」

須賀の中で弾けるものがあった。

「てめえらがっ 帆高に触るな」須賀は刑事を突きとばします。「帆高、行け!」


やった、やった。

公務執行妨害になるとか、世間体が、とか吹き飛んだ。陽菜さんを取り戻してこい、自分と同じ羽目になるんじゃない。

帆高は屋上へ去り、追った刑事は屋上で帆高を見つけられませんでした。

 

須賀が両手に手錠をかけられて連行されるときに、警察は消えた帆高の行方を捜していました。

天候が急変したときに須賀は何かが変わった気がしてビルの屋上を見た。二人は屋上にいる、空から帰ってきたんだ と。

さっきは誰もいなかったと刑事たちは訝りますが、果たして二人はいました。

二人が発見されたから須賀は勾留される理由もなくなり前科者になりませんでした。

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夏の雪という舞台装置

 

帆高がよい子で終る条件は(ラブ)ホテルで「もう二度と晴れなくていい」と言うこと

 

「ねえ 帆高はさ、この雨が止んでほしいと思う」

「うん」

雨が止んだ代償として陽菜は消えます。

「晴れなくていい」と言えば、陽菜は消えずに翌朝、3人はホテルの部屋で警察に補導されて、帆高は銃の在り処を答えて発見されたら警察にとっては一見落着です。

陽菜と凪は児童相談所に預けられ、帆高は捜索願いが出ているので家族が迎えに来たのでしょう。

 

そうはならないために雪が降る

 

凍える思いをしたら太陽が恋しくなります。

凍える思いをして「もう二度と晴れなくていい」なんて言葉は出ない。

普通の夏の雨、気温が低くなかったら、陽菜さんがいなくなるなら晴れなくていい という言葉が出かねない。

帆高に 晴れてほしい と思わせるためには、うん と言わせるためには3人で凍える思いをさせて追い詰める必要がある。

陽菜に 晴れてほしい? と問われて、帆高が うん と答える条件が夏の雪でした。

他の選択肢を与えないように練られている脚本だと思った。

 

それではまた。