フォルクスワーゲンのディーゼルエンジン不正問題をディーゼル悪玉論と結びつけるのは早計です。
ディーゼルエンジンを擁護する理由はディーゼル車の燃料である軽油の成り立ちが理由です。
製油所で原油から一次装置(蒸留)の生成で供給できる軽油に対して、ガソリンは一次装置のみでは需要に間に合わず二次装置(分解装置や改質装置)を用いて他の油種から生成しています。
一次装置で石油ガス、ガソリン、ナフサ、軽油、灯油、重油 アスファルトが生成されますが、各油種の収率はほぼ一定なので、日本やアメリカでは自動車燃料の主流であるガソリンが不足してしまいます。
ではどうしているのか。
二次装置(分解装置や改質装置)を用いて他の油種を改質して生成しているのです。
ガソリンは二次プロセスで抽出され、環境適合のためクリーンにして製品化されています。
勿論、分解・改質装置を動かすためにエネルギーが消費されCO2が排出されます。
この二次プロセス(ガソリンの抽出精製)が過剰であるとCO2の排出量、エネルギー消費、精油コストを増大させることに繋がるので必要な範囲で最少化が求められます。
http://www.paj.gr.jp/statis/data/data/2015_data.pdf
「石油連盟によれば、(元の資料が経済産業省)05年4月にまとめられた報告書では、例えば、ガソリン車に比べて燃焼効率が優れたディーゼル乗用車の保有台数比率が全体の10%にまで増加した場合、運輸部門におけるCO2削減効果は年間200万tと試算されています。
ガソリンの製造時に排出されるCO2の方が軽油の製造時に排出される量よりも多いため、
05年当時の年間軽油需要の10%(約400万kl)分がガソリン(6100万→5700万に減産)から軽油(4000万→4400万に増産)へシフトした場合は、製油所におけるCO2削減効果は年間170万tにも上ることが明らかになりました。」とあります。
(要約しています)
★★★
ガソリン偏重になると原油精製コストが高くつくので、灯油代やらガソリン代やら電気代やらが原油価格が下がっているのに思ったほど安くならない。
国内生産品の競争力を低下させることにもなっています。
安全保障のためにエネルギーの海外依存度を下げたいのに、軽油に対してガソリンの生産比率が高過ぎることが障害になっています。
独ボッシュ社の2013年東京モーターショーの資料(元の資料はドイツ自動車工業会、米国環境保護庁)によると
米国の3台に1台が最新のディーゼル車になれば、サウジアラビアからの原油輸入量(140万バレル/日)(1バレルは約160L 正確には158.987294928L)がゼロになってもまかなえる。
2010年度の輸入金額にして408億ドルにのぼる(日本円にして約4兆円!)
4兆円を新エネルギーの投資に使えるじゃん。
(40兆と書いてました。10/1 23:00に訂正しました。)
EUがディーゼル車の普及に躍起になる理由がここにあります。
ル・マン24時間の優勝車はディーゼル
2006~2008年 アウディ・R10 TDI
2009年 プジョー・908HDi-FAP
2010、2011年 アウディ・R10 TDI
2006年から6年連続でディーゼル車の優勝。
2012~2014年 アウディ・R18 e-tron クアトロ
前輪モーター、後輪ディーゼルエンジン駆動によるハイブリッド車です。
生活の糧がディーゼルエンジンという先進国の生活
船舶、機関車、気動車、バス・トラック等商用車、消防車、工事建設機械、コンバイン、トラクター、(潜水艦も)、病院や工場や計算センターで停電時のバックアップとなる非常用発電機エトセトラエトセトラ。
時には生死にかかわります。
都会も田舎もディーゼルエンジンがなければお店には何も並びません、食べ物も着る物も手に入らない社会に生きています。
田舎や無人島で自給自足で衣食住を確保したつもりになっても、手にしている大工道具や農作業や漁の道具はディーゼルエンジンがもたらした物です。
資源の採掘現場、搬出、工場への搬入、漁船のエンジン、市場への配送、店への配送。
ディーゼルエンジンは排除されるものではなく正しく作られるべきものです。
職業倫理が販売目標世界一の犠牲になった。
時間はない(2015年に販売世界一にせよ)、コストもかけられない(VWはメルセデスやBMWのように価格転嫁ができない)
時間も予算もない、しかし出来ないとは言えない。
販売目標を達成するかしないかの二者択一を迫られた。後者を選べば社内での立場はなくなる。
追い詰められた挙句、前者を選択した。結果的に最悪の選択となった。
目標を「達成する」ことから「最悪の事態を避ける」ことに転換する。
目標の変更は経営者に対する株主の圧力がかかることを意味します。
現場を追い詰めるのか、経営者を追い詰めるのかという二者択一の構図が再び現れます。
コストを上げずに規制に合格するという妙案や裏付けがない以上は、コスト上昇を容認して価格転嫁を行うか(販売目標の達成が難しくなる)。
価格転嫁をせずに1台あたりの利益率を犠牲にするか。
そういう議論もできない程 VWという会社は硬直していた。
成功することしか考えていない人は「最悪の事態を避けること」を考えない状態に置かれているのです。
それではまた