「安全第一というスローガンを掲げているだけでは、現場は安全と定時運行を天秤にかけて迷ってしまう。」
「遅発や引き返しが生じても会社はそれを容認し、関係者の下した判断を尊重します」とトップが宣言し何度も伝えています。
昔は飛行機に乗るのが怖かった。
ANAの墜落事故
下田沖墜落事故 1958年 乗客30名と乗員3名の全員が死亡。 機種:ダグラスDC3
羽田沖墜落事故 1966年 乗客乗員133名の全員が死亡。 機種:ボーイング727
松山沖墜落事故 1966年 乗客45名と乗員5名の全員が死亡。 機種:YS11
雫石衝突事故 1971年 岩手県雫石町上空で自衛隊機と衝突し乗客155名と乗員7名の計162名全員が死亡。 機種:ボーイング727
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ネットでANAの宣伝だ、きれいごとだという書き込みがあるけど、安全最優先は過去の経験から導き出されたことだと思う。
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墜落や死亡に至らなくても、航空機のトラブルは
利用者にとっては怪我の後遺症の治療、リハビリ、家族にかける負担、航空会社とのやり取り、ビジネスの遅延、休職、に伴う時間のロスとストレス。
航空会社にとっても利用者に対する補償問題、遅延に伴う目的地までの代替手段、便の振替手配、機体・乗員の手配、他社への振替、機体の修理、運行に使用できないため費用は発生するも稼ぎはない。修理不能により機体発注数の見直し、イメージダウンによる客離れで経営計画の見直し、関係機関への報告、調査協力、マスコミ対応。
部外者が思い浮かべるだけでも時間とお金のロスが甚だしい。
10分20分の遅れを惜しんだために機体破損に至れば利用者も航空会社も割に合わない。
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前回の 操縦系統(昇降舵、方向舵)喪失から生還したアメリカン航空96便 でも触れたけど
経由地デトロイトの地上係員は貨物ドアを電力で閉じ、モーターの音が止まるか聞いた。
モーターの音が止まれば所定の位置(ドアロックの位置)になったはず。
なのにロックピンが入らない。
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ここで整備士を呼べば 出発は遅れても機体は無傷で済んだ。
(地上係員は無理にドアハンドルを押しこんで貨物室ドアのロックピンを動かすロッド(中継棒)曲げてしまった。)
ドアを閉めたあとで地上係員が気になって呼んだ整備士も外見で判断して出発準備完了の報告をした。
ドアを一度開けてみればロッドが曲がっていることが見て取れたのに躊躇した。
(出発が遅れることを気にした?)
ここでロッドの曲がりを発見すれば、機体の交換や代替便の手配が発生するが、
利用客は機体トラブルの恐怖を経験しなくて済む。
便の振替や目的地への到着の遅れはストレスだが、死の恐怖を経験した上に出発地に引き返した後に代替便に乗り換えるよりも時間のロスは少ない。
家族連れだと代替機に乗るのも怖いと言い出す家族も出る。
空港側はトラブルが発生した飛行機が戻ってくるとなれば最悪、空港閉鎖も覚悟しなければならなくなる。
航空会社は利用客、関係機関への対応に加えて、機体の修理不能による損失(因みにボーイング787は約2億ドル 1ドル122円なら 244億円!)も莫大だ。
機体トラブルによる損失はあまりにも甚だしいので安全最優先はきれいごとではけしてない。
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マンション施行問題にも当て嵌まります。
横浜のマンション傾斜問題は工期の延長を避けたために莫大な時間と費用が発生しています。
杭打ち直しの1ヶ月2ケ月の工期延長を避けたために、解体と建て替えで2年以上の時間ロスを発生させました。住民の通勤・通学、進学にも影響します。
ついに手に入れた我が家、見学会、商談、購入資金の工面、引っ越し挨拶転居のお知らせ、子供の転校、地域に馴染んできた この時間は何だったのか。
販売会社、建設会社も企画 建設許可、資金の調達、販売商談、設計、人手の手配、セメントや鉄筋他資材の搬入、コンクリート打ち、内外装他建設に費やした費用と時間は何だったのか。
部外者が思い浮かべるだけでも時間とお金のロスが甚だしい。
安全第一はきれいごとではありません。時間とお金のロスを防ぐ手段です。
それではまた。