EUで発言権の強いドイツ、フランスは財政基盤の弱い南欧、東欧の加盟国に緊縮策を求めます。
借金はせずに、税収の範囲内で国家運営を行うべきであると。
正論です。
ところが、その正論のために南欧、東欧から豊かなドイツ、フランス、イギリスに移民が流入する事態を招くという皮肉な結果を招きました。
言われた通りに緊縮策を行いました。その結果、仕事が減りました。
南欧、東欧で仕事にあぶれた人々が南東欧から北西欧に移動しました。
「緊縮策を行いなさい」=「移民さんいらっしゃい」という話になりました。
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(2016年7月3日 朝日新聞 グローブ 医者とカネ)
医者が逃げ出すルーマニア
「研修医として英国で働いた。月収はルーマニア時代の10倍程度の3000~4000ポンド(約41万円~55万円)だった。
ルーマニアでは医者の国外流出が止まらない。1990年には5万9000人の医者がいたが、2014年末までに2万2000人が母国を去った。英国やフランス、ドイツなどが主な行き先で、20~30代の若い医師が目立つ。
医者流出が激化したのは、07年のEU加盟以降だ。
EU圏内で自由に働けるようになり、より高い収入が得られる国への移住が本格化した。
「医者不足で困っている母国を出るのは罪悪感があるけど、自分の技術に見合った報酬が欲しい。とても難しい選択だ。」
とばっちりを受けるのは患者です。
EU域内での移動の自由化が東西、南北格差を拡大する事態になりました。
キャメロン英首相が要求した人の移動の自由を制限する非常ブレーキ条項は英国のためのみならず、東欧にも必要なのではないか。(結果はEU側が拒否←削除 まだ結果が出たとはいえない段階)
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意地の張り合い
(6月30日 朝日新聞 朝刊 1面)
「英国を除く欧州連合(EU)加盟の27カ国は29日、ブリュッセルで非公式な首脳会合を開いた。英国に対して、人の自由な移動を受け入れない限り、EU市場への自由な参加は認めないという厳しい姿勢で一致した。」
離脱派の主張は移動の自由を認めないというものだった。
主張を通すなら市場への自由な参加は認めないと。
主導役が表舞台から退場。
6月30日 離脱派のジョンソン前ロンドン市長は与党保守党の党首選に出馬しないと表明。
7月4日 英国独立党(UKIP)のファラージュ党首が辞任を表明。
EUへの拠出金を社会保障に回すとした国民投票前の公約を撤回したことで非難を浴びていた。
離脱に投票した有権者は離脱のつもりであっても、政治家の離脱運動は離脱が目的ではなかったのではないか?
EUに政策の変更を迫るために揺さぶりをかけるための手段だったのではないか?
どうせ勝つがわけないから公約違反になりっこない。
(公約違反は投票結果で勝って初めて成り立つ話です。負けた場合はどんな公約を掲げても違反にならないというのが投票のトホホな現実です。)
蓋を開けてみたら勝ってしまった。困った。
政治家は離脱派も残留派も「残留支持」が勝つと思っていたんじゃなかろうか。
(7月3日 日本経済新聞 朝刊5面)
「フランスのオランド大統領は1日 キャメロン首相との会談後の記者会見で「英国の離脱は取り消すことも遅らせることもできない」」
後悔しても遅い、いい加減にしろ、と怒り心頭なんだろう。
英国の政治家に向かって言ってるんだろうか、国民に向かって言ってるんだろうか。
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国民投票やり直しの前例
(6月29日 日本経済新聞 朝刊7面)
1992年 デンマークはEU創設を定めたマーストリヒト条約を国民投票で否決した。
(7月1日 朝日新聞 朝刊11面)
2001年 アイルランドは欧州統合をさらに進めるためのニース条約、07年 同条約に代わるリスボン条約を国民投票で否決している。
デンマークとアイルランドはEUから譲歩を引き出し、2度目の国民投票で条約を可決した。
(デンマークは共通通貨ユーロ導入の免除を勝ち取った)
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英国で働くEU市民は300万人超 英国にとってはサービス、建設業に移民は欠かせない。
EUにとっても大きな労働市場。離脱は双方にとって痛み。
保守は自由競争と自己責任を謳い、左翼は人権と平和を謳い、中間層は放置された。
その不安と怒りを拾い上げて煽り勢力を拡大するポピュリズム。
英国の離脱撤回は、英国の移民排斥を謳う離脱主義者とEUの理念先行の中央集権至上主義者の抵抗に遭う。
移民の排斥は英国の活力を奪う。
一方で無制限の移動の自由はEU域内の格差を広げてしまっている。
落とし所はあるのではないか。
英国とEUと世界が極端な意見に振り回されることはない。
意地の張り合いをする頑固な人たちはスルーして再投票を実施しても何ら恥じることはない。
誤りを修正できないことは過ちを犯すことよりも恥ずかしい。
再投票をしない方が恥ずかしい。
それではまた。
「豊かさは節度の中にだけある」(ゲーテ クリストフカイザーにあてた手紙より)
「紙から得た知識、また紙に書くための知識は、私はあまり興味がない。学問の中にいかに死んだもの、いかに殺すものがあるかは、みずから真剣にその中に入っていくまでわからない。」(ゲーテ対話集 ビーダーマン編)
「数人の人たちがそれぞれ満足しているのは、彼らが思い違いをしているのに間違いない」「無知な正直者が、しばしば、たくみなペテン師の悪事を見抜く」(ゲーテ 格言と反省)
「美徳自体も使い方を誤れば悪徳になり、悪徳も堂々とした行いによってときに美徳になる。」(シェイクスピア ロミオとジュリエット)
「なんと呪わしい人間の考えか!過去と未来は最もよく、現在のことは最悪だと思うのだ。」(ヘンリー四世)
「きれいは汚い、汚いはきれい。」(マクベス)
「神々は、我々を人間にするために、何らかの欠点を与えるのだろう。」(アントニーとクレオパトラ)