VRビジネスの衝撃 「仮想世界」が巨大マネーを生む (NHK出版新書)
- 作者: 新清士
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2016/05/07
- メディア: 新書
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※上記の本から抜粋して前後を入れ替えたり、言葉を変えたり、コメントを入れています。
マルチプラットフォーム対応という発想
当初はそれぞれのゲーム会社が社内に専門スタッフを抱えて、CG(コンピュータ・グラフィック)を最先端の技術を使って開発し作り込んで他社と差別化を図りました。
やがてゲームを提供する場はゲームセンター、家庭用ゲーム機、携帯用ゲーム機、スマートフォンと広がっていきました。
ゲーム会社がそれぞれに専用のプログラムを書いて提供すると時間とコストがかかります。
さらにスマートフォンの時代になると各端末メーカーがアンドロイドOSをカスタマイズして使うので同じゲームアプリでも端末によっては正しく作動しない、さらに各端末メーカー毎に機種毎にOSのアップデートが行われる。
アンドロイド端末の全メーカーの全機種のすべてのアップデートに対応して動作確認をするテストを行うことは困難になりました。(事実上無理じゃないか)
※なのでiPhoneにしか提供されないゲームもあります。
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複数のゲーム機の互換性を担保するゲームエンジンの登場
米 ユニティテクノロジー社
ユニティは社内に専用の検証チームを作り、どの端末でもきちんと動作をするかをチェックする。
ユニティのゲームエンジンでゲームデータを1つ作成すれば、ほとんどの端末で動作が保証される。
そのためゲーム会社はユニティのゲームエンジンを採用するようになった。
3DCG作成行程 モデリング、レンダリング、物理エンジン
モデリングとは
3Dの物体を三角形や四角形、多角形(ポリゴン)の集合体として表現すること。
物体の境界線や面を表現するために数字や文字の列(パラメータ)を設定すること。
レンダリングとは
見る角度により光が物体のどの方向から当たるのかの情報を設定して最終的な画像を生成すること。
正面から見た時、後ろから見たとき、横から、上から見下ろす、下から見上げる、見る角度によって見え方が変わる。
事前に画像を作り込んである場合は プリ・レンダリング(映画)
VRのようにヘッドマウント・ディスプレイを装着した人の頭の動きに合わせて、ディスプレイに内蔵したセンサーからの情報でコンピューターが計算して、頭の動きに合わせて画像を生成するのをリアルタイム・レンダリングという。
頭の動きに合わせてヘッドマウント・ディスプレイを通して見る画像(風景)が変わるので、あたかもその画像の世界の中にいるような没入間が得られる。
物理エンジンとは
物体に属性を持たせる。
ある球体に固くて重いという属性を持たせれば投げても遠くに飛ばず、跳ねない。
弾力があって軽いという属性にすれば飛んで跳ねる。
風が吹いたら木はどう揺れるのか、あらゆる物体の物理法則に基いた動きを計算するのが物理エンジン。
モデリング、レンダリング、物理エンジンを自社でプログラミングして、あらゆる端末のアップデートに合わせて動作確認をしていたら莫大なコストがかかる。
マルチプラットフォーム対応のゲームエンジンが3DCG作成のコストを劇的に下げた。
汎用の3Dモデル(森や花や家や武器やら)、テクスチャ(質感、固い、柔かい、光沢やら)音楽や効果音がゲームエンジンメーカーのアセットストアで売っている。
ビジネス用ゲームエンジンのライセンス料
米 ユニティ社
パソコン1台につき18万円
米 エポックゲームズ社 アン・リアルエンジン
四半期の売上が2000ドルを超えた場合にのみ売上の5%
Amazon Lumberyard (無料 3D ゲームエンジンと開発環境)| AWS
アマゾン・ランバーヤード
アマゾンのクラウドサービス限定でコンテンツを提供することを条件に無料。
(アマゾンはユーザーのクラウドサービスの利用料で収益を上げる)
モデリング、レンダリング、物理エンジン、アセットストア(3Dパーツ等の提供)はゲームのみならずVR、ARのコンテンツ開発に欠かせない。
コンテンツ提供各社が一から開発して動作確認していたら時間とコストがかかって仕方がない。ますますゲームエンジンが重宝されることになる。
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自動運転にもゲームエンジン
レンダリング、物理エンジンのロジックは自動運転車の車載カメラや各センサー(加速度、気温、明暗、路面状況、前車、後車、対向車、並行車、歩行者、自転車との距離)から届く大量の情報をリアルタイムで処理する技術に転用できるのではないか。
災害対策にもゲームエンジン
実際の町の地形情報、ビルのレイアウト情報に3Dモデリング、レンダリング、物理エンジンで火災や地震、噴火、津波のシュミレーション情報を加えて被害を予測し、VRで体験する。
リアルタイムで情報処理するためにデータの軽量化や情報を滞留させないロジックのノウハウが蓄積されているのだろう。
メーカーに気付かれないようにゲームエンジンのライセンス料を払いながら、軍事転用の研究をしている国もあるんじゃないか。
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触感を実現したVR
(日本経済新聞2017年3月2日 朝刊 15面)
「エリクソン(スウェーデン)は英ロンドン大学と共同で、患者の感触を瞬時に遠く離れた医師に伝えられるシステムを開発した」
センサーから患者の体のデータを送り「医師がはめる手袋に患者の体の感触を伝える」
視覚・聴覚に触感が加わった。
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「身体を傷つけることなくコンパクトな装置で脳波を計測することができ、脳波の解読も正確で、またそれにかかる時間も速く、伝達可能なメッセージも多様性に富むという、画期的なBMIが開発されました。それは2010年、産総研ヒューマンライフテクノロジー研究部門ニューロテクノロジー研究グループが発表した「ニューロコミュニケーター」です。 ニューロコミュニケーターはその脳波計が携帯電話の半分ほどと非常に小型で、脳波計が取り付けられたヘッドギアを装着することで、頭皮上から脳波を測定することが出来ます。患者はパソコン画面上に表示された意思伝達メニューの項目の中から、自分の伝えたいことを選択します。この際、患者がどの項目を選んだかどうかは、脳波を解析することで判断します。項目の候補をランダムに光らせると、患者が選んだ項目が光った時に、脳波に変化が生じます。その変化を産総研が開発した「脳内意思解読アルゴリズム」で解析するのです。これにより、迅速かつ正確な意思の推測が可能となりました。」
口がきけなくても、水が飲みたい、寝返りをしたい。といった意思をディスプレーに表示させてコミュニケーションができる。 脳波の文字化の実現です。
脳波の文字化→脳波の言語化→脳波で物を動かす。と発展していくのでしょう。
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ブレイン・マシン・インターフェイス
1999年 米ニューヨーク州立大学
ネズミの神経細胞が発火したときに発せられる脳信号を検知してロボットアームを動かす実験を行い、その後も世界各地で研究が活発に行われ、サルが意思の力だけでロボットアームを動かしたり、コンピュータのカーソルを動かす実験が成功している。
脳波でアバターが話したり動いたりする日がくる。
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マイクロソフト・ホロレンズ―メガネ形状のウインドウズPC
現実空間の中に何枚もウインドウが表示され、目線と指の動きで操作できる。
ウインドウは頭の動きに合わせて追従するから、現実空間にウインドウが置いてあるように感じさせる。
タブレットもノートパソコンも手に持たなくて済む、周囲から見たら何もない空間でキーボードを叩くような動作をしてパントマイムみたいな状態になるのではないか。
普及して外で使われたら、みんなでパントマイムしているような状態になる。
営業用にノートパソコンを持ち歩かなくてよくなる。盗難や紛失で情報漏えいの心配がなくなる。
クライアントもホロレンズでウインドウ(ホロ・ウインドウ)を参照して内容を確認する。
ホロレンズを盗まれても、本人確認は目の虹彩で認証する方式にして他人は使用できないようにする。
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マイクとスピーカーと電話アプリが付いたらスマホも持たなくて済むか?
電話かかってくる度にARグラス被るのも面倒だからスマホは残るか。
普段かける眼鏡のサイズになればスマホも駆逐されるかもしれない。
それを開発するのはマイクロソフトか、アップルか、第三者か
眼鏡屋とレンズメーカーはユーザーの視力に合い且つAR画像の表示にも適したレンズを提案する。
眼鏡店でスマホ機能つきARグラスが販売されたりして。
そうなると家電チェーンが眼鏡チェーンを買収しようとしたりして。
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翻訳アプリで英語や中国語の会話が日本語で表示される。
こちらが日本語で話すと相手のARグラスに英語や中国語が表示される。
なまり や方言対応のアプリも開発されたりして。
関西弁で話したら標準語で表示、標準語で話したら相手のARグラスに関西弁の字幕が表示されたりして。
プロフィールを登録すると出身地情報で相手が何語を話してもARグラスには出身地の言葉が表示される。
SNSでともだち登録した相手とAR画像を共有する。となると安易にともだち承認はできなくなる。
医師のARグラスに医療用アプリが入ったら目の前の患者の横に患者のカルテ、服用中の薬が表示される。体温や血圧や熱分布が表示される。
面接官のARグラスに人事アプリが入ったら目の前の応募者の横に経歴を表示させたり、
整備士のARグラスに整備中の車のパーツリストや発注先を表示させたり、
買い物中に買い物リストや財布アプリが表示させたり、旅行先や出張先で地図や時刻表、スケジュールを表示させたり、
そうなると眼鏡は日本人のトレードマークではなくなる。
世界の眼鏡は度数の入ったAR眼鏡と度数のないダテAR眼鏡になる。
外光の影響を抑えるために偏光機能がついたり、
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悪用した画像は検索順位の底に沈める。
一旦ネットに流出した画像は完全に削除することは困難と言われています。
ARでは現実の画像に不正な画像を重ね合わせて事実のように見せかける悪用が想定されます。
被害が出て、公の規制を待っていたら、悪用者にさんざん荒らされた揚句に事業者が新サービスを始める際には認可を得るために山のように書類を用意するという事態になりかねない。
不良アプリ提供サイトや誹謗中傷画像のすべての削除が困難であれば、検索エンジンのアレゴリズムで検索順位の底に沈めて人目につかないようにする防衛策が望まれます。