nikoichixのブログ

新聞やテレビ、本を見て思ったことを綴っています。書いてみたらこんな展開になるとは思わなかった。まいっか。

規制の対象は需要と供給? 品質(消費者保護)じゃないの?―特振法(特定産業振興臨時措置法案)が通っていたらどうなった?

加計学園獣医学部新設の文科省の認可で問題なのは獣医学部の過剰とか不足の話なのか。

教育の質だけを審査すればいい。需要は気にしなくていいのではないか、本筋から外れているのではないか。

供給不足だから基準に満たない学校が認可されたり、供給過剰だから基準を満たしても認可しないということになれば本末転倒になる。

 

大学を卒業しても職に就けない、定員割れで入り易くて卒業しやすい、卒業したあと奨学金を返済できない。

規準が緩いのではないか、結果的に奨学金を返済できない卒業生を生み出した。

☆★☆

 質が担保されていないと学生は、親は授業料を払うことに二の足を踏む。

質を担保(規制)するのが国の役割。レベルに達していれば認可する、達していなければ認可しない。その前提が崩れると市場が歪む。

 

レベルに達しないサービス、商品が社会に供給されて問題が起きると消費者が離れて市場が冷え込む。

品質を担保することが市場の安定につながる。

☆★☆

品質(国)、需要予測(民間)という役割分担

 

需要予測が外れて供給過剰になっても供給不足になってもどっちに転んでも批判される。

需要予測は大学側や出資者が判断することで、国は需要(消費者)サイドに立って品質を担保(規制)するという役割分担がされている。品質と需要予測の両方をやることはないのではないか。

 

国が需要予測までやるのは計画経済です。計画経済の国(旧ソ連)の末路は知れ渡っています。

予算獲得のために需要予測が増大、ばら撒き批判を避けるために需要予測が過小という本末転倒になりかねない。

☆★☆

通称 特振法案

 

1963年から1964年にかけ内閣は特定産業振興臨時措置法案を国会に3回にわたって提出するも審査未了のまま廃案となった。(よかった)

貿易自由化や資本自由化という外資参入の危機感から、通商産業省企業局が立案し、推し進めた国内産業向けの合理化構想であった。

イギリスが、国内企業が外資に駆逐されて“ウィンブルドン現象”に陥ったのに対して、企業の大規模化のためには、民間だけに任せるのではなく、政府も参加する、という官民協調の推進策であった。

1963年(昭和38年)3月、鉄鋼業(合金鉄・特殊鋼・電線)・石油化学(化学繊維)・自動車産業(乗用車・自動車タイヤ)を特定産業に指定し、合併ないし整理統合、設備投資を進めることを骨子として、この法案が閣議決定された。

 

通産省は日本の自動車会社九社体制を三社に集約させ、大型車中心の生産体制になるように行政指導しようとした。(特定産業振興臨時措置法案)

(ところがその後オイルショックが起こった。大型車中心の生産体制が成立していたら日本もアメリカの二の舞いになっていた。)

(農業構造改善事業などに多額の国費を投入してきたにも関わらず生産性の向上は進まなかったのは国際競争からの保護が政策の中心だったから。)

☆★☆

需要サイド(消費者)ではなく供給サイド(生産者)に政府支援を行う

 消費者利益に適うのか。

政府が将来発展しそうな産業を選んで、補助金を与えるのが成長戦略か。

政府の補助金を期待して、民間はそれを待とうと思ってしまう。

待っている間に世界のライバルに先を越されてしまう。

先を越された電気メーカーの場合

 2015年 ホンハイ(台湾)の連結売上高   16兆円

2016年 シャープ(ホンハイ傘下に)    2兆4615億        6.5倍

参考 日立                 10兆 343億

 

白物家電売上高  2014年

東芝(美的集団に事業売却) 2254億

美的集団(中国)     2兆7600億      10倍も違う

 

護送船団方式

2007年 iPhone発売 ポケットに入るコンピュータの誕生です。

これは脅威なのに護送船団 みんなで横並び、抜け駆けは許さない、パトロンスマホをやると言わない。

待っている間にアジア企業が世界でシェアを確保する。

 

日本では通信会社が端末を売る、メーカーにとってのユーザーは通信会社。

海外勢にとってのユーザーは消費者、ユーザーは通信会社に関わらず機能と価格で自由に端末を選ぶ、だからメーカーにとってのユーザーは消費者になる。機能や価格でライバルを下回ればすぐに市場から振り落とされる。

 

タッチパネル、高精細の小型液晶パネル、半導体フラッシュメモリリチウムイオン電池スマホを構成する技術のすべては日本にあった(パーツメーカーは盛況、完成品メーカーは撤退が相次ぐ)

日本のメーカーがスマホを売りだしたのは2011年 iPhone発売から4年が経過していた。その間に海外勢にシェアを奪われていた。

メーカーは次々と携帯端末から手を引き、生き残っているのは、ソニー、京セラ、シャープ、富士通、他は軒並み撤退した。 

☆★☆

かつて通産省は、多過ぎる自動車メーカーを3社に集約させようとした

 

日米自動車メーカー現状 ※大型車ブランドは含まず、( )内は子会社

日本  トヨタダイハツ)、日産(三菱)、ホンダ、マツダ、スズキ、スバル 

アメリカ  GM、フォード、テスラ、(クライスラー※伊フィアット子会社)

 

通産省の計画

  1. 量産車グループ  トヨタ、日産 マツダ
  2. 特殊車輛グループ プリンス、いすず、日野(高級車、スポーツカー、ディーゼル者)
  3. 軽自動車グループ 富士重工マツダ

に集約し、新規参入は通産省の認可制にしようとした。

 

法案が通っていたら

ホンダ、スズキ、ダイハツ、三菱がない。

世界初の排ガス規制クリア、アメリカ現地生産の先駆け(ホンダ)、インド市場シェアナンバーワン(スズキ)がなかった。

トヨタは量産車グループ(高級車・スポーツカーは造るな) レクサスも86やスープラもない。クラウンもランクルもなかったりして。

日産傘下になるプリンスは特殊車両グループ、日産の高級ブランドはインフィニティではなくプリンス?

富士重工(スバル)は軽自動車グループ(小型車は造るな)  レガシィインプレッサフォレスターが誕生しない。

軽自動車 にスズキ、ダイハツ、ホンダという今日のメインストリームがない。

法案が成立したら日本だけではなく、世界の車の歴史を変えてしまっていた。日本車は保護されてガラパゴスな車を造り続けて国際競争に勝てなかった。

☆★☆

個人や少人数の頭で考えたことで決め打ちすることの限界を如実に顕わしています。

人々の発想を封じ込めてしまう。

解放を謳いながら計画経済を実施した国は、思想家の発想の中に人々を封じ込めることになってしまいました。

個人が考えたことを絶対視する。限界になるのは必然でした。

 

それではまた。

 

 

本田宗一郎夢を力に―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

本田宗一郎夢を力に―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

 

 

東芝解体 電機メーカーが消える日 (講談社現代新書)

東芝解体 電機メーカーが消える日 (講談社現代新書)