nikoichixのブログ

新聞やテレビ、本を見て思ったことを綴っています。書いてみたらこんな展開になるとは思わなかった。まいっか。

「反省する」と「反省させる」の大きな違い

 

反省すると反省させるの違いは能動と受動の差異ではありません。本質が違います。

 

やってやる と口にする人は殺りません。本当にやる気なら邪魔が入らないように黙ってやります。ゴルゴ13が「やってやる」とそこらへんで言いふらしていたら仕事になりません。

やってやる という言葉と実際の殺人は言動と行動の差異ではありません、本質が違います。 格闘技の試合を見て ぶっころせ と言う人は 実際に殺人が行われることを望んでいるのではないのです。一種のガス抜きです、ガスを抜くことで暴発を防いでいる。寧ろガス抜きが出来ない人が自分或いは他人に向けて暴発する。

nikoichiも若い頃は ぶっころしてやる と言われましたが、言った人に飯をおごられました。

※自分に対する暴発は うつ や自傷、自殺、他人に対する暴発は暴力や犯罪

 

「反省させる」ことのおそるべき副作用

 本書は大学で学生相談のカウンセリングを行う著者が縁あって刑務所の受刑者の支援を行うようになり、事例で被支援者が受刑者になるまでの過程で強制された反省が作用していることを述べています。

更に反省を(させる)と更生せずに刑期を終えて出所した後で、また事件を起こして刑務所に戻ってくる。反省を強制する圧力は犯罪者を生み出し、よい社会を築く妨げになっていると警鐘を鳴らしています。

 

事例:30代後半 罪名:殺人ならびに銃刀法違反

 

中学に入ってから集団からいじめを受けるようになり、グループから金を持ってくるように言われる。→家にある母親の金を盗み、次第に高額の金を持っていくようになる。→グループの仲間にかわいがられ喫煙を勧められるようになり、いじめはなくなった。→母親に家の金を持ち出したことがバレてしまう。

→勇気を振り絞って、いじめを受けていたことを正直に話し許しを乞おうとした。→母親は「いじめは自分で解決しなさい。二度と家の金を持ち出さないと誓いなさい。」と言って「反省文」を書かせた。

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→非行グループと付き合い始め、家の金を盗むことはなくなったが万引きがエスカレートし無断外泊が増えていった。

→高校に進学するものの学業についていけず中退。飲食や建築関係の仕事をするが、人間関係がうまくいかなくて、いずれも長続きせず、仕事をしないでパチンコ屋通いの日が続く中で、暴力団員になっていた昔の仲間に声をかけられて暴力団に加入する。

暴力団の組長と組長の妻にかわいがられ「組の役に立ちたい」と考えるようになる。そんなある日、組長から殺人を依頼される。組にとって面倒な存在を殺してほしい「お前を信頼している、頼んだぞ。」抵抗するどころかうれしくなり、二つ返事で引き受ける。

 

トリガーは「反省文」

 親にいじめを受けていると告白することは恥ずかしい、いじめを告白することでいじめがエスカレートするかもしれない、勇気をふりしぼって言った結果が反省文を書けという仕打ち。

心を閉ざして最早素直になることはなくなった。心を閉ざしては仕事に就いても周囲との関係をつくれない、仕事が続かない。そこへ暴力団員から声をかけられ、かわいがられ、暴力団しか居場所がないと思い込むようになる。後は鉄砲玉として使われた。

 

甘ったれるな、人間が弱い、と言い切れるか。生まれた時から強い人間はいない。

強くなる機会がなかったのではないか、幼い時から抑圧されて自己肯定感が育たず自信がないのでいじめのターゲットになったのではないか。

強いのは運ではないか

 他人を弱いと見下すことができるのは、親に自己肯定感、自信を失わせる育て方をされなかったからではないか。

 

告白は関係修復の最後の機会だったのにそれを逃した。辛いことを話すということは聞き手に対して心を開いているということなのに「よく話してくれたね」と受け止めるのではなく「反省文を書きなさい」と突き放された。心を閉ざす他なくなった。

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なぜ親は抑圧的な行動を取ったのか

 

親も祖父母から抑圧的に育てられて、その方法しか知らなかった。抑圧されて我慢をし続けると自分の辛さに鈍感になり、他人の辛さにも鈍感になる。

他人の辛さに鈍感になるとたとえ自分がやらなくても子、孫の世代が問題行動を起こして犯罪者が出ることになる。

連鎖を断ち切るには 反省(させる)のをやめることだと云う。

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反省する と 反省させる の大きな違い

 

言い訳するな、相手の気持ちになって考えろ、ションボリさせてうな垂れさせて溜飲を下げるのなら自己満足のために叱責していることになる。

反省したフリをして本心を隠して問題行動をエスカレートさせて犯罪に至る。

謝ればいいんだろ と軽く考えるようになり、鈍感になる。

 

相手の裏をかいて事件を起こす人はいても、相手の気持ちになって考えながら事件を起こす人はいない。

そういう人に「相手の気持ちになって考えろ」と言っても考えたフリをすることは事前に分かることではないか。

嘘をつくことに鈍感にさせるだけではないか。

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急がば回れ

 

著者のやり方はまず、被害者や自分の親へ率直な気持ちを書かせる。

相手に対する不満を吐き出させることからはじめる。

殺人犯は最初、殺された人間が悪いと云う。それを素直に書いていくうちに自分が悪いことに気付き最後には悔恨が生まれた。

(一般的には ふざけるな!遺族の気持ちを考えろ!と止められて 「いきなり反省」に修正させられる)

 

自分の心の痛みに気付かない限り反省ははじまらない

自分の心の痛みに気付く方法は相手に対する不満を吐き出させること。

不満がくすぶっていると前に進めない、新しい気付きや価値観が得られない。

 

自分の心の痛みに鈍感な状態では他人の心の痛みが想像できない。

 最初から相手の立場になることなど無理な話で、まずは自身の感情を吐き出すことで、はじめて相手のことを考えることができるようになり反省する。

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他人事のように考えてもいいのではないか

 (他人事のように考えるなんてとんでもない!)

記者会見で自分のしたことを他人事のように話して怒りを買う人がいる。

非難をされて言葉を続けることができなくなる。

 

他人事のように第三者が見たように俯瞰して話せばいいと思う。

自分事と思っていてはひどいこととは言いにくい。他人事と思えばひどいことと言える。それから自分のことに戻せばいい。

 

相手に対する不満を吐き出させると不満の原因に辿りつく、自分事ではなく他人事のように考えたら他人の視点でどうしてやってしまったのかという分析ができる。

分析が終わってから自分に当て嵌めれば悔恨になる。後悔なしでは反省ははじまらない。

後悔を飛ばしていきなり反省は変ではないか。

 

反省とは 急がば回れということだった。

「反省する」急がば回れ、「反省させる」性急

 

自分がしてきた行動や発言に関して振り返り、自分の行動や言動の良くなかった点を意識しそれを改めようと心がけること。

結論ありきではなく分析なくしてははじまらない。

 

 

それではまた。

 

 

反省させると犯罪者になります (新潮新書)

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