言ってなくても免責にならないのではないか
(日本経済新聞2018年5月23日朝刊35面)
『「つぶせば出す」監督指示 日大選手、会見で説明』
5月3日の練習
前監督「やる気があるのか無いのかわからないので試合に出さない。辞めていい」
コーチ「おまえが変わらない限り練習にも試合にも出さない」
5月5日の練習後
☆コーチ「監督に、相手のQB(クォーターバック)を1プレー目でつぶせば出してやると言われた。相手のQBがケガをして秋の大会に出られなかったら得だろう」
5月6日の練習前
選手本人「相手のQBをつぶしにいくんで使ってください」
前監督「やらなきゃ意味ないよ」
コーチ「思い切り行ってこい。できませんでしたじゃ、済まされないぞ」
5月6日の試合後
前監督「こいつの(反則)は自分がやらせた。成長してくれるんならそれでいい。相手のことを考える必要はない」
※☆は筆者が追記
☆印の発言が“思い切り当たれ”の意味では済まない“ケガをさせる意図”につながると思ったのか、翌日の会見でコーチは発言を否定します。
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(日本経済新聞2018年5月24日朝刊35面)
『前監督「私の指示ではない」危険タックル コーチ「潰せ」認める』
コーチ「得か損かと言っていない。けがという言葉を使ったかどうかは覚えていない」
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言っても言ってなくても関係ないのではないか?
日本代表に行かなくていい。練習にも試合にも出さない。辞めていい。とプレッシャーをかけられて冷静な状態でいられるか?
冷静な状態ではないところで「つぶせば出してやる」と言われて、思い切りいくという意味に受け取れるか?
冷静でいられない状態に追い込んでから過激な言葉で指示を出すのは悪魔の囁きです。
こいつ冷静じゃない、言葉通りに受け取ったらヤバイと過激な言葉は控えることをしなかった。
わざとではなくても、そういうことを考慮できないのは指導者・管理者としての資質に欠けるという話になる。
言葉足らずではなく 言葉余り
ルール違反は想定外、言葉足らずだったと弁明をしていたが、言葉足らずではなくて余計なことを言ったと思う。
「やらなきゃ意味ないよ」 (前監督は「言ってないと思う」と否定)
「できませんでしたじゃ、済まされないぞ」(何を?)
冷静な状態ではない相手に言ったら、本当にケガをさせなければならない と思い込む恐れがある。
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どうすればよかったのか―不自然な挙動で疑念と不信を招く
監督・コーチ・選手が連れ立って怪我をさせた選手に謝罪、見舞いに行けばここまでの騒ぎにならなかったのではないか。
3週間が経過したのに大学側が当該選手にヒアリングを行っていないのは不可解。
何か裏があると疑われても仕方がない。
被害選手は全治3週間の怪我を負って脊髄を損傷して麻痺が残る恐れもあった(日本経済新聞5月22日朝刊39面)と報道されているのに怪我をさせて悪いと思っていない、怪我をさせても構わないくらいに思っていたのではないかと疑われても仕方がない。
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騒ぐようなことじゃない くらいに思ったのだろうか。
(日本経済新聞5月29日夕刊11面)
「内田前監督ら「除名」検討 関東学連 日大危険タックル」
「関係者によると規律委員会は「反則は監督とコーチの指示」と認定した」
警察の捜査を待たずに関東学生連盟が動いた。
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意図的でないのは却ってアブない
意図的ならやめるという判断ができる。
意図的でないならやめるという判断ができない。
自分の行動と言動が周囲にどのような影響を与えるのか想像ができない。
惰性と習慣で考えもなくやってしまう。
指導者・管理者として能力が欠けているという話になる。
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従順な人が却ってアブない―自分の痛みに鈍感なので他人の痛みがわからない―自分がされたことを人に返しているつもり
素直と従順は違う
何の疑問もなく受け入れ、受け入れられることと受け入れられないことを区別したり、考えたりしない。結果、恩師の劣化コピーになる。
自分はしごかれた。自分は乗り越えた。反面教師にしないで自分も同じことをする。
部下に、教え子に、子供に返す。
乗り越えたのは全部自分の力だと思っている。仲間のフォロー、恩師のフォローがあったことを覚えていないか気が付いていない。しごかれたことだけを覚えている。
しごきだけで成長できると思い込む。
甘ったれるな、このぐらいできて当然だ、自分がされたら困る、嫌だと想像ができない。
自分が若い頃はできたと思い込んでいる。それは幻想。
幻想に振り回される側はたまったものではない。
どうして潰れるのかわからない。どうして離反されるのか理解できない。いくらでも代わりはいる。去る者は去れ。
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就任早々の好成績は前任者の功績
前任者が選手を育成していたことを忘れたり認識できずに自分に実力と思い込むと後が続かない。
自分にないところ、欠けたところを補ってくれる人は自分とは違うタイプの人。自分と同じタイプの人、自分の言いなりになる人としか付き合えないのでは指導者の器ではないという話になる。
自分に意見するコーチは受け入れられない。上意下達オンリー
自分の欠点がチームの欠点になっていることに気がつかない、認められない。コーチが悪い、選手がたるんでいる。
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本当はしごきが嫌だったが自分を騙したのではないか
痛みに強いのではなく強がっていた。強がっているうちに自分の痛みに鈍感になっていった。強がっていることを強いと思い込んだ。
自分の痛みを認識できない人に他人の痛みがわかるわけがない。
想像力の欠如
練習に参加させない、試合に出さない、日本代表に行くなと追い詰めた上で、相手のQBをつぶせと言ったら、本当につぶしに行くと想像できない。
追い詰めないで 潰せ と言ったら気合い ルールの範囲だとわかる。
追い詰めて 潰せ と言ったら冷静な判断力を失っているので言葉通りに受け取りかねない。
本当に相手を潰してしまったら潰した選手が処分されてタダでは済まない。という想像ができなかった。
わかっててやったのなら選手を捨て駒にしたことになります。
わからなかったのなら想像力が欠如していることになります。
想像力が欠如した人が重責を担えるのかという話になります。
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日大の学生はピンチなのか?
就職面接で訊かれるという。
企業側は資質を見極めたいのではないか、他人事のように考える傍観者タイプなのか、自分事と捉えて意見を持っているのか、関心を持たれているということではないか。
危機管理学部の学生はピンチなのか?
危機管理できない大学の危機管理学部と揶揄のネタにされている。渦中にいるのだからレポートを作成するチャンスではないか。
大学当局はどのような対応を取れば問題をこじらせなかったのか、常時の備えと問題発生時の体制を提案するチャンスではないか。
ただで転ばないでほしい。
それではまた。
※毎週土曜日に公開していますが、今週は早めにUPLOADしました。5/29