山で熊にあったことがない、こちらが思っているだけで熊はこちらを見ていたのかもしれない。
熊が先に察知して離れていったのかもしれない。
家畜を襲うクマは捕まらない
本書はヒグマを60頭獲ったアイヌの熊撃ちの体験談から熊への対処法が記されています。
熊は家畜に対しては強いが人間に対しては弱い。人間に対して恐怖心をもっている。家畜を襲うクマは人間の裏をかいて逃げるからなかなか捕まらないという。
人を襲ったクマがむしろ捕まる
人を食料だと思って逃げないで襲ってくるのでハンターは獲りやすいという。
なぜ人を襲うようになるのか
大型のクマは寧ろ人を襲わないという、大型であるということは長生きしている熊であり、長生きしているということは用心深く生きてきたクマであるから人を襲うようなリスクを犯さない。
人が気付かずに、或いは気付いて不用意に小熊に近づいた(NGな行為)ために小熊を守ろうとした母熊に襲われたり、不意に出会ってしまった若い熊が人に向かってくる。長生きしている熊は人にあわないようにうまく回避する。
☆★☆
人の味や人の食べ物の味を覚えさせてはいけない
背中を見せて逃げてはいけない
熊の側が人を得体の知れない生き物として警戒しているのに、背中を見せて逃げたら人は弱いと熊に教えることになる。
逃げ出したぞ、なんだ弱いんだ、と追いかけてくる。熊は時速60キロで走るから逃げられるわけがない。熊は下り坂を速く下りられないなんて都市伝説みたいな話を信じてはいけない、すぐに追いつかれる。
襲ってみたら力も弱くて他愛ないと人を食料として覚えてしまう。
熊に背中を見せて逃げるのは自殺行為にとどまらず、人食い熊を誕生させてしまう。
木に登って逃げるという対処法を見たことがあるけど、熊は木登りがうまいから意味がないのではないかと思う。
鹿は熊を見たら、背中を見せて逃げるが、鹿の足なら逃げ切れる。
背中を見せて逃げる人間は熊にとっては足の遅い鹿のような生き物に見える。
猿は熊を見たら、木を登って逃げるだろう、猿なら熊が登ってこれない高い細い枝まですばやく辿りつけるし、隣の木に飛び移ることもできる。
木に登って逃げる人間は熊にとっては木登りの下手な猿のような生き物に見えるのではないか。
☆★☆
リュックを置いて逃げると人間の食べ物の味を覚えてしまう
リュックを背負っている人間を見つけたら食べ物を持っていると思って次々と人を襲うようになってしまう。
既に人の食べ物の味を覚えてしまった熊には置いていかないと追いかけてくる。
まだ人の食べ物の味を覚えていない熊にリュックを置いていくと人を追いかける熊にしてしまう。
いったいどうやって区別をつけるのか。
☆★☆
熊の目から目をそらしてはいけない
熊撃ちは相手(熊)の動作をゆっくり見る。真正面から立った姿勢で体を揺り動かさないで、動かない姿勢で相手をじいっと見て「ウォー」と言う。
熊が立ち去らないのでもう一度「ウォー」と声を出し、目をそらさないでいると熊のほうが目をそらして立ちあがってまわりを見回して逃げる方向を見定めて逃げたという。
熊が立ちあがるのは襲いかかるためではなく、視界を広くして逃げ道を探すためだという。
この時 熊撃ちはキノコ狩りに来ており銃は持っていなかった。
子連れの熊の場合は小熊は見ないで母熊の目を見ながら後ずさるという。
☆★☆
ヘビが苦手
これは意外だった。
縄やゴムのパッキングはヘビのように見える。山菜やキノコを採って生計を立てているおばあさんはゴムのパッキングを持ち歩き、振り回して対処したという。
自分が熊にあったら縄を持って行ったりすぐに取り出すことは出来ないからベルトを振り回したらいいのだろうか。
棒でつつくのは怒らせるからよくない(ストックでつつくのはやめよう)。細かい枝のついた木を振り回されるのが嫌いで顔をそむけたという。
向かってくる(若い雄)には手近の木から葉や細かい枝のついたままのを取って振り回すのが有効らしい。
逃げ足の速い人が襲われる
7 8人のグループが熊にあって一斉に逃げ出したら、足がもつれて倒れた高齢者が襲われずに一番逃げ足の速い若者が襲われたという。
逃げるものを襲う習性があるということか。
人の味、人の食べ物の味を覚えた熊に遭ったら不運だが、熊にあったら背中を見せないで目を見てベルトを振り回すことにする。
それではまた。
クマにあったらどうするか: アイヌ民族最後の狩人 姉崎等 (ちくま文庫)
- 作者: 姉崎等,片山龍峯
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/03/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (7件) を見る