(日本経済新聞2018年9月12日朝刊9面)
「解読スルガ銀報告書 中」「苛烈なパワハラ常態化」「「ノルマのため」現場暴走」
達成困難で非現実的なノルマ
・営業部門で通常の収益目標と比べ1.5倍高い独自目標を設定
・7%超の無担保ローンを1ヶ月で10億円実行
(大丈夫か!)(大丈夫じゃなかったから事件になっている)
・投資用不動産融資に携わった行員の87%がノルマの高さを認識
(ノルマの高さを感じなかった13%は異常だと思っていなかったのか、それとも上層部を気遣って第3者委員会のアンケートに正直に応えなかったのか)
上司からのパワハラ
・上司に首をつかまれ、壁に押し当てられて顔の横の壁を殴った
(さすがに顔を殴ったらまずいとは思っていたのか、殴った壁はコンクリートじゃなかったのか)
・毎日2~3時間、立ったまま詰められた。天然パーマを叱責。
(ヒマなこと)
・数字ができないならビルから飛び降りろと暴言
(飛び降り方の手本を示してほしい)
・死ね、給料どろぼう、できるまで帰ってくるな、と罵倒
(スルガじゃなくてもあるんじゃない)
・目標を達成できなければ 家族皆殺しにしてやる と脅迫
(こりゃアウトだね)(部下との関係修復は厳しいね)(こんなこと言われて仲良くしていられたら上司も上司だけど部下も部下と思われる)
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非現実的なノルマで現場が自暴自棄になり仕事が他人事になっていた
会社の利益と顧客の利益のバランスが度外視されていた。もはや眼中にない。
“お客様のため”と言っても利益がなかったら事業サービスが継続できない。
ボロ儲け狙いで顧客から“ぼったくり”ではよい関係が築けない。
こんなことをしたら、部下との関係が、顧客との関係が、出資者・取引先との関係が、世間の評価が悪化すると思い止まることができない状態、想像することができない状態。
(非現実的なノルマは人間を壊すんだね)
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そもそもどうしてここまで不動産に入れ込むのか
(日本経済新聞2018年9月26日朝刊7面)
「不動産投資への過剰融資を抑制」「金融庁、銀行の審査体制を点検」
「…返済能力を越えた過剰な融資をしていないか、銀行の審査体制を中心に検査・監督で厳しく点検し、行き過ぎを防ぐ。不良債権予備軍が増えれば金融システムを揺るがしかねないと判断し、早期に手を打つ」
バブル崩壊を招いた大蔵省(当時)による総量規制という急ブレーキを踏まなくて済むように、徐々にブレーキをかけるということです。
値上がり目当てに不動産を買う投資資金の流入で不動産価格が高騰して、住むために家を買いたい人が家が高過ぎて買えないのはけしからんと不動産投資に規制をかけたら、資金の流入が止まり、バカげた価格が是正されたら高掴みした個人法人は資産価値の元本割れで借金が返せなくなり、銀行は不動産関連融資の焦げ付きによる経営悪化で企業に貸し出す資金が足りなくなったり回収を急いだりと、不動産投資に手出しをしていない企業も巻き添えを食った。
そんなことになる前に手を打つということです。
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融資案件が担保になる不動産融資
貸金が回収できない、できそうにない、焦げ付いたら債務者の不動産を抑えればいい。
その一方で事業資金の貸し出しは法人口座のお金の動き、売掛金や買掛金の動向と一致するキャッシュの動きを見せているかチェックをしたり、金額によっては追加の担保や保証人を求めたりと手がかかる上に、団塊の世代の高齢化とその世代の引退による企業の廃業で、日銀が緩和策を講じているのに貸し出し先が減っている。
数字を上げるためには“不動産”ということになってスルガ銀行のようなことが起きた。
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世襲が必須になってしまう
優秀な社員がいても、いざ後継者にとなると保証人・担保の問題に行きつく。他人に頼めないと世襲になる。跡を継がないと言われたら万事休す。
地元企業同士のM&Aなら地銀に出番はあるが、大企業に特許や事業が継承されたら大企業のメインバンクは都銀なので地銀は取引先を失う。
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相続税対策で土地建物は細分化されたり融資案件になる
先祖から親から継いだ広い土地・建物には相続税がかかる。事前の対策として相続前に売却、或いは地主自らの経営で、屋敷があった土地にマッチ箱みたいな家が密集して分譲されたり、アパートやマンションになる。
高度成長期で住宅の供給が間に合わない時代の、住宅の供給に協力する国民を税で優遇するという政策を今も続けている。
家余りの時代になったのに、高度成長期の家を増やすための税制を今も続けている。
そこに融資が絡む。実際に住む人にとって現実的でない価格や賃料は市場で修正されて借金の返済が困難になり不良債権化する。税制でバブルの引き金を引いているようなものではないか。
財力・資産のある人は一軒家を購入すればいい、賃貸住宅は公団や自治体等が提供して賃料を抑えて消費に回るようにするのが理に適う。
(そんなのは社会主義的だ、なんでもかんでも民間に任せるべきだ)
土地バブルの崩壊の煽りで製造業や小売り、流通や不動産以外の企業が巻き添えを喰った。公が関与することを徒に忌避して市場原理だけに任せると却って資本主義を脆弱にする。
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屋敷も町の風景の一部
相続税対策のために屋敷や畑や林や原っぱが消えて、規格住宅の分譲地やアパートやマンションになる。
町の風景がつまらなくなる。子供の遊び場所や住民の憩いの場所がなくなる、カブトムシやクワガタ、トンボやチョウ、バッタといった虫が見られなくなり、風景が廃れた町には成長した子供が帰って来なくなり町の衰退が始まる。町が衰退すると不動産価格が下がり借金が返せなくなる。
(イヤなこと言うな―)
地主の肩を持つわけじゃないけど、住んでなくても屋敷が消えていくのを見るのは寂しい。
畑や林や原っぱがなくなるのを見るのは寂しい、これも町の風景の財産だ。
高度成長期の相続税制はもうやめないと地域が荒廃する。
それではまた。