現実と意識のギャップ
著作権(財産権 憲法29条)を守るか、通信の秘密(憲法21条)を守るか、どっちか選べ。
29条違反vs護憲と21条違反vs護憲という構図。どっちを立てても憲法が立たずという構図。
(なんじゃそりゃー)
「海賊版サイト 対策まとまらず」「有識者会議、無期限延期へ」(日本経済新聞2018年10月21日朝刊5面)
「漫画やアニメを著作権者に無断で掲載する「海賊版サイト」の対策を議論する政府の有識者会議が意見のとりまとめを断念し、中間報告書を策定できないまま無期限延期となった。」
☆★☆
(10月5日朝刊2面)
第8回有識者会議中間報告(9月19日)
「訴訟手続きによる司法型ブロッキングを採用するのであれば憲法上の問題を生じる可能性は低い」
上記の文言はブロッキング法制化を進める布石と警戒され、慎重派を強硬にさせた。
なぜブロッキングに慎重なのか
プロバイダは利用者からのアクセスを受けて各サイトに接続する。
ブロッキング(通信を遮断)するためには利用者が問題のサイトに接続したかどうかを捕捉する、どんなサイトに接続したのかをチェックすることになる。
それは通信の秘密の保障に反する。拡大解釈されて運用されたらと慎重派に警戒された。
☆★☆
削除要請が追いつかない―現場は限界
(8月20日朝刊5面)
「「マウスを操作しすぎて腱鞘炎になりました」大手出版社の担当者はこぼす。」
「作品データの削除依頼で月に3万~4万件、海賊版サイトへのリンクを表示しないよう検索サイトに求める要請で月5万~6万出すが、効果がごくわずか」
検索サイトが応じても、しばらくすると再び違法データが現れるというイタチごっこが続いている。
早くなんとかしてくれというのが現場の切実な思いではないか。
☆★☆
海賊版サイトは広告収入で成り立っているケースが多いという
「サイトへの広告配信システムは複雑で多層的な構造になっている。いくつもの事業者を経由して自動的に広告が配信される仕組みで、特定のサイトへの広告出稿だけを止めるのは難しいのが実情だ」
違法ダウンロードの対象は動画のみ という現状
2年以下の懲役若しくは2年以下の懲役、静止画も対象にすることが求められている。
でも対象になったところで、出版社は利用者を特定して警察に被害届を出す、出版社と警察は証拠を押さえる、という手間(ハードル)が立ちはだかる、実効性に?がつく。
☆★☆
海外の事例
「広告主、広告事業者、権利者、消費者団体等と会談を実施。2016年10月21日に関係者は”Follow the money “ approach(お金をたどるアプローチ)の枠組みに合意している。※
合意された指針によると、この覚書にサインした団体は、著作権侵害コンテンツに対して広告が配置されないようにする義務を負う。」
EUでは広告主が海賊版サイトへの資金源を断つ義務を負っているという。
合意したということは技術的に止める手段があるということか。
☆★☆
アクセス制限は訴訟で確定判決を得ることを求められている
フランス…ウェブサイトの削除や、ウェブサイトへのアクセス制限、検索結果からの削除等、広範な対策がとれるように法律に定めがあり、利用されている。
法律に定め…判決
イギリス…基準に則って削除を行っている事例が多い。
法的な対応としてウェブサイトへのアクセス制限が活用される一方で、業界団体の取組が進んでおり、資金源対策や、簡易な警告システムの構築等が行われている。
ドイツ…基本的にウェブサイトの削除要請。
ウェブサイトへのアクセス制限、検索結果からの削除については、利用の可能性について提示されているが、
現時点で認められた事例がない。
☆★☆
アメリカでは個人のインターネット接続の停止が行われている
- 繰り返し著作権侵害をしていること。
- プロバイダが予め繰り返し侵害している者に対してアクセス切断をすることを伝えていること。
アメリカでは利用者が違法サイトにアクセスしていることを把握して警告を発するという。
米英は財産権を重視、仏独は通信の秘密を重視だから判決を得る必要がある。
日本はどっちを重視するかで意見がまとまらない。
☆★☆
出版社の負担で運営者を特定すべき という建前は無理やり感が漂う
偽名や偽住所で配信サービスを利用する相手を特定すべき、何千何万とイタチごっこのように湧いて出る相手を全部捕捉すべき。
建前を主張する人はできるのか、手法をもっているのか、手本を示せるのか。
そんなことはこちらの知ったことではない、出版社が考えろというのでは他人事感が漂います。
解決する気はないのではと疑われてしまいます。
(落ち着け~)
☆★☆
有識者会議は解決機関ではない
学識経験者や実務経験者などで構成される会議で、幅広い視点から調査・審議を行い、意見を国や自治体に具申する。
それを受けて国や自治体が法案等を策定する。
学者・弁護士の矜持として憲法に抵触するおそれのある提言にお墨付きを与えてはならないと抵抗した。
(でも、意見がまとまらないことで国の意向通りで固まる人選はされていません。国は公平で民主的な人選をしているというお墨付きを与えた。)
一方で出版社は次から次へと湧いて出る違法サイトをひとつひとつ相手を特定して訴えて裁判所の判断を待つなんて現実的ではない、そんなことをこの先何年何十年と続けろというのか、現場が持たないと悲鳴を上げる状態でお互いに話がかみ合わない。
☆★☆
ブロッキングも穴がある
「遮断回避のアプリケーションが簡単に見つかる」(8月20日朝刊5面)
遮断しようとしても逃げられるイタチごっこになる懸念がある。
遮断する費用は誰がもつのか、プロバイダか、出版社か、という綱引きになる。
犯人が捕まるまでは犯人に請求できない。
☆★☆
実際に裁判になったら裁判所がパンクする
違法サイトの運営者を全部捕捉して(無理だと思う)裁判にかけることが出来たら、違法サイトの裁判で裁判の日程が埋まって、他の刑事、窃盗や殺人の裁判が進まない、民事の裁判も進まない、人手が足りない、法廷が足りない、裁判官、検事、弁護士が足りない、「法務省の予算10倍お願いしまっす」、財務省「…………」。
そんなことになるわけがない、実現する日が来るわけないと思っているから建前を主張できるのか。
どうにも回らなくなってAI裁判が始まったりして
AIに尋問を却下されたり退廷を命じられたり。
アクセス追跡もAIを使う。(AIが自律制御で行う)
そんな未来を弁護士や学者が望んでいるとは思えない。
☆★☆
資金源対策
アメリカ、イギリス、フランス、スウェーデンの4ヶ国で資金源対策が進められている
各国とも民間による対応であるが、イギリス、フランスでは警察または管轄省庁が体制の構築に協力している。
近年どの国でもこの対策を重視しているとされ、イギリスでは海賊版サイトへの広告が73%減となるなど(2013~2015年)、効果も上がっているとされる。
☆★☆
根本的な対策は憲法論議よりも資金源を断つこと
違法サイトを運営する動機は広告収入を得ること
収入を得られないなら やる動機が失われる。
有識者が憲法論議してまとまらない間にネット広告業界が違法サイトに広告が表示されないシステムを構築したら痛快だ。
(不謹慎だぞ)
それではまた。