私は中立です。どちらにも付きません。
そうだよね、らしいよね。と周りが認める場合もあれば、日和ってるんじゃねぇ、と反発される場合もある。
中立は宣言するだけでは成り立ちません。周囲に認められることが条件になります。
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一方が圧倒的優位になる中立は中立とは言えない
前回…ドイツが中立化することは米軍のドイツからの撤退です。
ドイツから米軍が撤退することは事実上 米軍の欧州からの撤退です。
(米陸軍、空軍、海兵隊、特殊部隊の基地はドイツにあります(海軍基地はイタリア)
冷戦時において、それはソ連に対し西側が劣位になるということです。
ドイツの中立はソ連の圧倒的優位を意味しました。
つまり中立策を採ることはソ連の味方を意味しました。中立=米英仏の敵を意味しました。
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ドイツが中立化したら、スイス、スウェーデンの中立は中立とは見做されなかった
米軍基地がない状況で、ソ連、及びその衛星国である東欧に対抗するために西欧諸国は一致団結すべきだという話になり、スイスもスウェーデンも中立の立場ではいられなかった。
冷戦時代において周囲が共産主義化して兵糧攻めにされたら、いくら中立だと言っても自由主義経済を維持できない。
スイス、スウェーデンが中立国でいられるのはドイツに米軍基地があるからです。
ソ連が崩壊して東欧諸国がEUに加盟してもNATOがなければ、おそロシヤの意識で中立=ロシアの味方と周囲から見做されかねない。
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大陸国家にとっては国境は首都から離れているほどいい
首都に国境が近いと不安、すぐ敵に首都が陥とされてしまう。国境は首都からできるだけ遠ざけたい。それは隣国にとっては侵略です。
保護するとか文明化するとか名目をつけられて武力に劣る小国が併合されたり、併合した大国が没落したり分裂したり、諸侯が連合したりして国境はかたちづくられました。
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非武装中立の条件は軍事的、経済的に価値がないこと
資源もなく侵略する価値がないと見做されることで非武装が成り立ちます。その代わりに抵抗する術がないので大国の核の実験場にされたりします。
国土の位置が軍事的価値があれば中立を叫んでも通り道にされてしまいます。
第二次大戦でルクセンブルクはナチスドイツに中立を無視され通り道にされ、ノルウェーは通り道にしたいドイツとイギリスの両方から攻撃されたので戦後、中立をやめました。
武力で負けたら、中立国ではいられないのです。
中立と非武装は両立しません。
経済的価値があれば中立を叫ぶだけでは収奪されてしまいます。
国土の位置を移動したりできない。国を世界の辺境に引っ越したり、経済的価値を無くすためにみんなで貧乏になりましょう。と言っても国民が納得するわけがないので、中立国は武装して徴兵義務があります。(抵抗、対抗、交渉するネタも手段も持ち合わせていなければ、相手の腹次第になってしまいます。4月12日追記)
冷戦時代において米軍の撤退を意味する日本の中立はソ連の圧倒的優位を意味しました。ソ連の味方を意味しました。今なら中立策はアメリカからは中国、ロシアの味方と見做されます。
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日本の都は公卿政権は内陸で武家政権は海沿い
公卿を中心とした朝廷による政権の都は奈良、京都(今の京都府とは違い日本海側は若狭でした)といった内陸で、武家を中心とした政権の都が鎌倉、大阪、江戸と海沿いにあるのは交通の便もさることながら、武力を以て侵入を防ぐ気概があり、公卿の政権は海からの侵入を怖れたからではないか。
王政復古をした明治の政権が内陸ではなく海沿いの江戸を東京と改めて都としたのは公卿が牛耳る京都から皇家を離す意図のみならず、薩長という武家政権が海沿いであることを恐れなかったからではないか。
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日本の中世近世において中立は滅亡・没落を意味した
平家と源氏の争いから距離を置いた奥州藤原氏は政権を握った源氏に滅ぼされました。
徳川にも豊臣にも付きません。中立です。
そんなことは許されなかった。
徳川に味方しなかった武家は領地を召しあげられ、徳川に味方した武家に分け与えられた。
潰されなくても縮小を余儀なくされた。
味方をした武家に恩恵がなければ忠誠を得られない。
江戸から最も遠く武力がある薩摩は抑えるのが面倒、制圧に時間をかけていたら他の武将が反旗を翻すおそれがあると考えたのか、島津は徳川に領地を取り上げられなかった。
生き残りの条件は名・実ともに面倒な存在になることでした。
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どっちが勝つかわからないから、どっちにも付かない。
それだけなら日和見。
どちらにも共感できるところがないのか。同じである必要はない、自分の考えにより近いのはどちらなのか。
どっちが勝っても自身が必要とされるスキルがあるのか。
どちらにもつかないことによって一方が有利になる中立は中立とは見られず、一方の味方、一方の敵ということになります。
意見もない、自信もない、でどっちにもつかないのは日和見。下手すれば敵と見做されます。
それではまた。