ソニー損保のホームページを見ていたら 1986年~2015年の自動車販売台数のランキングがありました。
あの時売れていた車は 人気乗用車販売ランキング
http://www.sonysonpo.co.jp/infographic/ifga_car_ranking.html
「新車選び、車購入の参考に」と謳っているけど、これはなかなかメーカーの栄枯盛衰もうかがえて興味深いものがあります。
今から30年前 1986年(昭和61年)の国内自動車販売ランキングTOP10です。
サニー 199,724(2)日産(現ラティオ)
ブルーバード 128,085(5)日産(現シルフィ)
クラウン 116,476(7)トヨタ
シビック 107,501(9)ホンダ
名前が変わっていないのは3車種のみで、今でもTOP10ランキングに載るのはカローラしかありません。隔世の感があります。
(後継車を含める場合はヴィッツが該当します。)
2015年(平成27年)のTOP10
アクア 215,525(1)トヨタ
フィット 119,846(3)ホンダ (前身 シティ)
ノート 97,995(5)日産
デミオ 72,771(8)マツダ(前身 フェスティバ/レビュー)
ヴェゼル 71,021(9)ホンダ(前身 初代のCR-V)
カローラ以外は30年前にはないブランニューモデルです。
5車種は前身のようなものがありますが無理やり当て嵌めた感があります。
4車種は前身すらありません。
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シティは3ドアでフィットは5ドアです。しかしシティもフィットも輸出名はジャズです。
カローラ店はタウンエース、オート店(現ネッツ)はライトエースで当時はトラックベースのキャブオーバー(1列目と2列目の間にエンジンがあり、後輪を駆動)でした。
モデルチェンジでタウンエース・ノア→ノア、ライトエース・ノア→ヴォクシーと名前を変えました。
CR-V 発売当時の1995年時点はシビックベースのコンパクトな車でした。
アメリカ市場の要望に応えて大型化し現在の型になりました。
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当時TOP10の車がどのような販売推移を辿ったのかを追っていきます。
※文中の( )内の数字は販売ランキングの順位です
※30位以内に入っていない場合はランク外と表記しています。
トヨタ車の1986年→1989年(バブル景気)→2000年→2005年→2010年(リーマンショックの後遺症醒めやらず)→2015年の推移
- 1300、1500クラス
カローラ 200,220(1)→291,617(1)→162,870(1)→149,810(1)→111,265(4)→109,027(4)
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2015年は最盛期1989年の3分の1です。しかし
2015年はアクアの 215,525台(1)があります。合わせると324,552台です最盛期に匹敵する台数を稼いでいます。
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- 2000~2500クラス
1986年→1989年→2000年→2005年→2010年→2015年
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マークⅡ 166,141(3)→217,451(2)→74,092(11)→63,738(18 マークⅩに改名)→56,955(14)→ランク外
2000年時点で大きく台数を減らし、2015年はランク外に去っています。しかし
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2000年→2005年→2010年→2015年
エスティマ 122,437(3)→ランク外→50,053(16)→ランク外
ノア 38,617(20)→72,859(13)→56,955(14)→53,945(16)
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2005年→2010年→2015年
ヴォクシー 72,991(12)→72,163(9)→92,546(6)
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2015年
エスクァイア 59,034(12)
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2000年以降はマークⅡが落とした台数以上にミニバンが代わって稼いでいます。
2015年は3車種合わせて205,525台です。
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- 1600~2000クラス
1986年→1989年→2000年→2005年→2010年→2015年
カリーナ 165,562(4)→172,429(4)→32,686(28)→ランク外(アリオンに改名)→ランク外→ランク外
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コロナ 120,479(6)→157,218(5)→33,058(27)→ランク外(プレミオに改名)→ランク外→ランク外
こちらも2000年代にランキングを大きく落としていますが
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2000年→2005年
イプサム 35,840(25)→ランク外(2009年生産終了)
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2005年→2010年→2015年
ウイッシュ 92,006(6)→59,447(13)→ランク外
プリウス 43,670(26)→315,669(1)→127,403(2)
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2000年代前半はミニバンが、後半からはプリウスがカバーしています。
2010年のプリウスの315,669台はバブル期のカローラを超えています。
5年で26位から1位にランキングUPしました。エコ意識の高まる世相を表しています。
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- 2000~3500クラス
1986年→1989年→2000年→2005年→2010年→2015年
クラウン 116,476(7)→185,877(3)→101,000(6)→79,546(10)→40,529(22)→44,316(20)
こちらも2005年は10万台を下回っています。しかし
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2005年→2010年→2015年
アルファード 81,647(9)→35,754(25)→44,336(19)
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2010年→2015年
ヴェルファイヤ 61,015(12)→54,180(15)
最盛期には及びませんがミニバンと合わせて台数をカバーしています。
2015年はクラウン、アルファード、ヴェルファイヤ3車種合計で142,832台です。
減った分はドイツブランドに取られた?
1970年代~80年代の国産車の2000~3000クラスのレイアウトはBMWのコピーでした。
スカイラインやマークⅡはエンジンが直列6気筒、サスペンションはフロントがストラット、リヤがセミトレーリングアームといったBMWと同じレイアウトを取り入れました。
1982年に発売されたメルセデスベンツ190(Cクラスの前身)が後輪にマルチリンクを採用すると国産車もマルチリンクやダブルウイッシュボーンを採用するようになりました。
ドイツブランドは高嶺の花でした。
バブルを経て日本人は豊かになり、BMW、メルセデスを買えるようになりました。
国産車はモデルチェンジを繰り返うちに大きくなり、いつの間にかBMW3シリーズやメルセデスベンツCクラスの方が相対的にコンパクトで取り回しがしやすいということになってしまいました。
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- 1300クラス
1986年→1989年
スターレット 103,225(10)、→ランク外→(1999年生産終了)
高額車種が売れたバブル期でランク外になるも
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2000年→2005年→2010年→2015年
ヴィッツ 160,731(2)→131,936(2)→122,248(3)→92,546(6)
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2005年→2010年→2015年
パッソ 87,956(8)→89,373(10)→45,449(18)
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2015年
シエンタ 63,904(10)
スターレットの後釜はヴィッツが、ヴィッツが台数を落としても節目節目で台頭する新ブランドが台数をカバーし上乗せしています。
見事なまでの戦略です。
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対して日産はどうでしょうか。
1986年当時、TOP10に2000~2500クラス、2000~3500クラス 高額帯に該当車はありませんでした。
- 1300、1500クラス
1986年→1989年(バブル景気)→2000年→
サニー 199,724(2)→154,323(6)→57,765(15)
→(2004年~ 後継ティーダ)
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2005年→2010年→2015年
ティーダ(ラティオ含む) 98,069(4)→46,825(18)→ランク外
経営危機のさ中の2000年 台数を最盛期の4分の1まで落とします。ルノーとの提携で2005年は持ち直していますが、2010年には経営危機の時よりも台数を落としています。
- 1600~2000クラス
1986年→1989年(バブル景気)→2000年→2005年
ブルーバード 128,085(5)→124,837(8)→36,725(24)→(2001年モデル廃止、シルフィを後継と考えるかどうかで見方が分かれます。)
現行のシルフィは2015年はランク外で このクラスでは存在感が希薄です。
しかし
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2005年→2010年→2015年
セレナ 69,973(14)→75,040(8)→61,796(11)
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2010年→2015年
エクストレイル 36,898(24)→58,448(14)
ミニバンとRVを合わせて台数をカバーしていると考えることもできます。
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- 1300クラス
2000年→2005年→2010年→2015年
キューブ 85,836(8)→74,818(11)→54,406(15)→ランク外
マーチ 62,902(15)→62,505(19)→49,193(17)→ランク外
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2005年→2010年→2015年
ノート 93,925(5)→66,347(10)→97,995(5)
2005年は3車種で約23万台の販売規模がありましたが2015年はノートの孤軍奮闘です。
ティーダを中国市場向けに大型化して国内販売を打ち切ったのは日本市場は縮小するという読みのもとに行われたのだと思う。
市場縮小以上に顧客の流出を伴うリスクも覚悟の上だったのか。
トヨタのようにコロナ→プリウス、クラウン→アルファード・ヴェルファイアという台数を稼ぐ代役を育てることが出来なかったことがトヨタとの差に表れています。
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マツダの場合、1980年代にトップ10に入っていた車はファミリアです。
1986年→1989年(バブル景気)→2000年
- 1300、1500クラス
ファミリア 109,456(8)→118,630(10)→31,461(30)→2004年販売終了 後継 アクセラ
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2005年→2010年→2015年
アクセラ ランク外→26,704(30)→24,749(30)
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- 1300クラス
2000年→2005年→2010年→2015年
デミオ 77,538(10)→67,055(15)→65,949(11)→72,771(8)
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2015年
CX-3 30,020(26)
2015年はアクセラ、デミオ、CX―3の3車種を合わせて127,540台で最盛期を上回る販売台数となっています。
1車種が大きな台数を稼ぐも他の車種は不振という状況を脱して、複数の車種で台数を積み上げる構造に変わっています。
ホンダ
- 1300、1500クラス
1986年→1989年→2000年→2005年
シビック 107,501(9)→144,689(7)→42,035(18)→ランク外→(2010年 日本仕様の生産終了)
2000年に大きく台数を落としていますが、ここでもミニバンがホンダを支えます。
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2000年→2005年→2010年→2015年
オデッセイ 120,391(4)→64,003(17)→ランク外→ランク外
ステップワゴン 79,270(9)→91,745(7)→80,934(7)→53,699(17)
かつてのシビックの地位はフィットが受け継いでいます。
シビックはアクセラやインプレッサをライバルと想定して1600~2000かつてのアコードクラスの後継にしたらいいのではないか。
アコードはすっかりアメリカ向けの車になったから日本回帰は難しいと思う。
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2005年→2010年→2015年
フィット 125,894(3)→185,439(2)→119,846(3)
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2015年
ヴェゼル 71,021(9)
シャトル 34,992(24)
2015年はフィット、ヴェゼル、シャトル 3車種合わせて225,869台、シビックの全盛期を余裕で越えています。リコールがなければもっと伸びたのではないか。
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後継車と云えばモデルチェンジと考えます。
しかし30年のスパンの中で上位に居続けたのはカローラ(1位→4位)だけでした。
実際は新ブランドを育てることに成功したメーカーが地歩を築いていました。
今から30年後もカローラは上位にいるのか。(自動運転の燃料電池車かな)
それではまた。