かつて社会主義に疑問を差し挟む人が“反動”というレッテルを貼られる時代がありました。
今は自由主義に疑問を差し挟む人には“ポピュリスト”というレッテルが貼られます。
理論が正しいから結果はついてくるはず?
社会主義国では 思想が正しいのに結果が伴わないのはブルジョワジーと帝国主義のスパイの仕業だと※粛清されました。
現実とのすり合わせを考える人間は日和見だと※総括されました。
思想と理論は正しいと決めつけて、事実と現実は悪と決めつけて、矛盾の責任は他人に押し付けてスケープゴートを仕立て上げました。
社会主義と資本主義のよいところを取り入れて、よくないところを修正するのは修正主義だ、不純だ、日和見だ と批判されました。
純粋=恐怖でした。
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10年で終焉を迎えたフランス革命後の共和制
革命によって生まれたフランス第一共和制は、ナポレオン独裁による執政政府の開始によって約10年で終わりました。(1789年7月14日バスチーユ襲撃~1799年11月18日ナポレオンのクーデター)
ナポレオンによるフランス第一帝政を経て、ナポレオンの失脚後にはブルボン王朝が復活しました(フランス復古王政)。
フランス王政の終焉は1870年の普仏戦争(プロシア・フランス戦争 ナポレオン3世降伏を経て共和制宣言)の結果でした。
法律による保護や人身の自由、所有の権利をうたった「人権宣言」は、空文にすぎませんでした。
革命政府(ジャコバン派)は独裁政治を始めて公安委員会、保安委員会、革命裁判所などの機関を通して恐怖政治を行い、反対派を次々とギロチン台に送りました。
しかし参政権を得た下層市民、無償で土地を得た農民、インフレによる生活圧迫や恐怖政治によって自らの生命をも脅かされていた反ロベス・ピエール派に国民公会でロベス・ピエールをはじめとしたジャコバン派の22人は糾弾され逮捕されてギロチンで処刑されました。(テルミドールのクーデター)
ジャコバン派が粛清されてブルジョワジーが復権しましたが、ナポレオンのクーデターにより第一共和制は終焉を迎えました。
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レーニンによるロシア正教会への弾圧
「これを口実に銃殺できる反動聖職者と反動ブルジョワは多ければ多いほどよい。今こそ奴らに、以後数十年にわたっていかなる抵抗も、それを思うことさえ不可能であると教えてやらねばならない」
主教達を処刑し、教会資産の没収が強行された。同様の弾圧は、ロシア正教会以外のウクライナ正教会、グルジア正教会などの正教会やイスラム教に対しても行われた。
マルクスの「宗教は阿片である」を”文字通り”に実行したのです。
※スターリンの大粛清は、イデオロギーへの傾倒というよりも権力闘争によるものなのでこの章では詳述しません。(※ソ連政府はミハイル・ゴルバチョフ書記長の時代に1930年から1953年の時代に786,098人が反革命罪で処刑されたことを公式に認めた。)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E7%B2%9B%E6%B8%85
「過酷な取調べ・尋問の過程で死亡した者や、有罪判決を受けて劣悪な環境下で服役中に死亡した者の人数については正確な統計が残されていないため、その人数を合わせれば死亡者数は増大するはずである。また農業集団化に伴う「富農」追放や、飢饉によって死亡した人数は、推計によって最大約700万人に達する可能性がある。」
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資本主義の要素を全否定したカンボジアのポル・ポト政権
通貨の廃止、私有財産の没収が行われた上、教育や医療も否定され、国立銀行を初めとした国家機関はその全てが廃止された。
また、カンボジアで伝統的な上座部仏教も弾圧の対象とされ、全ての僧侶が強制的に還俗させられ殺害され、寺院は破壊された。
ポル・ポトは米の生産量を3倍に引き上げることを目標に掲げ、この目標の下、都市住民を農村に移住させて農作業や灌漑施設の建設などのために、劣悪な環境のなか朝5時から午後10時まで働かせました。
近代的な機械は資本主義の罪悪の象徴とされたため、機械の使用は許されず、全ては人間の手作業によって行われた。
過酷な労働環境の結果、過労により死亡する者が相次いだ。また生産も計画通りとはいかず、貧しい食生活と劣悪な労働環境は多くの国民を飢餓、栄養失調、過労による死へと追いやっていった。
このような惨状を目の当たりにしたポル・ポトは、自身の政策の失敗の原因を責任転嫁しました。裏切り者やスパイが潜んでいるためであるとして、反革命分子であるとスケープゴートを仕立て上げて粛清を行いました。(本人は信じ込んでいたのかもしれません。)
眼鏡をかけている、文字を読もうとした、少しでも学識がありそうな人は片っ端から殺害されました。
※ベトナムが支援するヘン・サムリン政権は1975年から1979年の4年間の死者数を300万人とした。(これはのちに下方修正された)(カンボジアの人口は約800万人 、国民の3分の1以上が文字面通りの革命実現のために殺害された)
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連合赤軍リンチ殺人事件(1971年~1972年)
共産主義化の理想のもと厳しい統制や教化が敷かれ、その末路が14人もの同士を殺しあうリンチ事件となった。
「革命家たる者は革命の利益に反することをした場合、自らの死を持って償わなければならない。」ということを“文字通り”守らなければならない。
指輪をしていることは革命戦士としての自覚に欠ける。
生理がとまらない女性が生理用品を求めると「女性兵士になろうという自覚に欠ける。」
山本順一は妻の保子と生後18日の長女を連れて榛名アジトにやって来たが、山本は保子のリュックサックの中に赤ん坊のオシメを入れるのを手伝っているのを永田に見られ、「夫婦気取りで革命ができるかい」と目をつけられる。保子は目の前で夫が皆からリンチを受けているのを目撃した。
平等社会を実現するための革命と言いながら実際の行動は差別から始まるリンチ行為。
文字通りに行動する=恐怖です。
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グローバル化の犠牲者がアメリカ中流家庭という皮肉
(2016年9月29日 朝日新聞 12面)
「昨年(2015年)の人口動態調査によると45歳から54歳までの米国の白人の死亡率は上昇している。」「自殺や麻薬、肥満といったことが原因でしょう。生活レベルの低下、退職後の不安…」(フランスの人類学者 エマニュエル・トッド氏)
自由主義経済で豊かな生活を得られないのは自己責任だ。
1990年代~2000年代初頭、経済繁栄を謳歌する米国はアメリカンスタンダードをグローバルスタンダードと称して各国に規制緩和、貿易自由化を求めました。
資本の移動が自由になった結果、国家は投資を国内に留めるために規制の緩和と税率下げの競争を始めました。
国家が国際競争に巻き込まれました。
資本は規制(労働規制、環境規制)と高税率を嫌って規制の緩い、税率の低い方へ移動します。国家は財源不足となり福祉国家であることが困難になりました。
国の国際競争力を維持して財源も確保しようとすると、資本への課税を下げる競争(競争だから止め処がありません)をする一方で国民に負担を求める他なくなりました。(税率を上げるか福祉を削るか)
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国際競争に勝つため利益を確保するために賃金を抑制する、自由主義を信奉する英米では移民を低賃金で雇う。
日本のような終身雇用制は社会主義的だ、自由主義に反すると批判されました。
工場を新興国に移して新興国の労働者を低賃金で働かせる。英米の労働者は失業するか低賃金で働くしかなくなった。
背に腹は替えられないと言うのに、背に腹を替えるのが当然だ、背に腹を替えないのは自由主義に反するという無茶振りをされていると英米の有権者は感じていた。エリートは見て見ぬふりをしていると反発されました。
現実を見て修正を行おうとするのは保護主義だ、ポピュリズムだ、とレッテルを貼られて非難されました。
その結果がトランプ現象、英国のEU離脱です。
トランプ氏は解決できない。EU離脱は愚かだ。と言う側も解決策を持ちあわせていませんでした。
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(2017年1月14日 日本経済新聞 夕刊3面)
「F35戦闘機 値下げ」
トランプ氏が「高すぎる」と批判した次期ステルス戦闘機F35についてロッキードCEOはトランプ氏と協議した。
「契約間近の90機について大幅に価格を下げた」
オバマ大統領には高く売りつけて、まだ就任していない次期大統領の批判で値下げしたってこと?価格は何だったの?
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高まるドイツ銀行破綻の懸念。ドイツでは家庭用金庫が売り上げ増 | ハーバービジネスオンライン | ページ 2
日本は国が借金を背負っているがドイツは国家が負債を負っていないから健全財政といわれます、しかしドイツ銀行がGDPの20倍の借金を背負っていますから国全体では同じ穴のムジナです。借金の在り処をつけかえているだけです。
※しかも皮肉なことにドイツ銀行の歳入の19%はEU離脱を決めた英国に依存している。
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EU域内の移動の自由はテロリストの出入りも自由にしてしまった。
長所しかない仕組みという都合のいい話は早々あるものではない。
共通通貨ユーロはドイツに万年通貨安(経済力以下の通貨価値)をもたらし、南欧諸国に万年通貨高(経済力以上の通貨価値)をもたらす。これって共通通貨といえば聞こえはいいが、ユーロ圏内限定の事実上の固定相場制ではないのか。
武力を使わずに理想論(一つの欧州)を語って支配する構図ではないのか。
南欧諸国やフランスがユーロ離脱をして自国通貨の切り下げを行えば、ドイツ企業はマルク高で輸出で利益を上げ難かった時代に逆戻りする。
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共通通貨、ひとつの欧州、理想を聞いて素晴らしいと思いみんなが飛びついた。
至極便利で悪いことなんて一つもありません。そんな都合のいい話はなかった。
自由主義=善ではない。保護主義=悪でもない。そんな単純なものではない。
いい自由主義とよくない自由主義がある。いい保護主義とよくない保護主義がある。
社会主義は善でも悪でもない、よいところだけ取り入れたらいい。
資本主義は善でも悪でもない、よいところだけ取り入れたらいい。
純粋を志向するのはブランド嗜好のようなものです。政治経済はブランド商品ではありません。
それではまた。