殺人犯として起訴された被告が心神耗弱により責任能力がないと認定され、法の裁きを受けさせない決定が下されると事件の被害者の遺族や近隣住民は「何の罪もない人が命を奪われたのに、犯人が法律で命を守られたことに到底納得できない」とコメントされます。
事件に関係のない第三者が「処罰感情が満たされなかった」「スカッとする展開にならなかった」ので、不満をSNSで発信したりブログで意見表明するのはありがちです。
(あんたもね、死にたいから死刑にしてほしいから事件を起こす人に死刑は効果がないとか言ってたよね。)
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刑事裁判と心神喪失
心神喪失が認められて無罪となった被告は、そのまま釈放されるのでしょうか?
答えは否です。医療観察法の定めにより釈放の前に必ず措置入院が挟まれ、裁判所と専門医が退院できると認めるまで必要な治療を受けることになります。
判決後に措置入院した中で退院した被告は2割程度に留まり、罪状によって差異はありません。無罪だからと安易に社会復帰させている訳ではなく、治療しながら慎重に判断しているということです。
(結果的に執行猶予なしの禁錮刑と変わらないんじゃないの?)
(日本は2割だけど、アメリカは州法で入院の期間の定めがないからずっと精神病院に入院で自由に外出できないから事実上の終身刑と同じだよね。)
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無罪=釈放ではない
措置入院した被告の約2割は退院できるまで緩解(完治とは言えずとも心身が穏やかな状態)するという。
しかし、残りの8割は退院は許されません。
(それって事実上の終身刑と同じじゃないの。)
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心神喪失等となると、その事件は無罪となりますが
無罪も執行猶予も、刑事措置として勾留されている被告人をそのまま身体拘束し続ける根拠がなくなります。
しかし、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行なった者の医療及び観察等に関する法律「医療観察法」があります。
この法律は池田小学校事件をきっかけに制度化されました。
(死にたいから、死刑にしてほしいから複数の人を殺傷する。刑事裁判の判決で最高刑の死刑にすると被告の希望を叶えることになるという皮肉。)
(その皮肉な結果に国民の処罰感情は満たされなかった。)
(死刑にして望みを叶えない。代わりに精神鑑定をして精神病院に入院させるという制度ができた。)
(精神病院を刑務所代わりに使っているともいえる。
元被告と一般の患者が一緒。死刑にしろといって暴れる元被告の患者もいるんだろうね、それでスタッフのストレスが溜まって暴行事件が起きてるんじゃないの?)
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池田小学校以前とその後
以前ー死にたいから死刑にしてほしいから無関係な人を複数人殺す→希望通りに死刑。
その後ー死にたいから死刑にしてほしいから無関係な人を複数人殺す→精神鑑定責任能力なし→無罪→精神病院に入院措置→緩解したと診断されず退院出来ない→死ぬことも出来ず社会と隔絶。
(死にたいから死刑にしてほしいから無関係な人を複数人殺傷すると死刑にされずに精神病院から出られなくなります。)
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入院期間については、法律上は上限がありませんが、厚生労働省のガイドラインでは、概ね18か月以上(以下ではない)を目指すとされています。
(ということは、管轄責任は法務省から厚生労働省へスライドってこと?)
緩解と認められ退院した後の通院期間については、3年間、ただし2年間延長することができます。
(あまり報道されないから、精神鑑定で責任能力がないと認定されると納得できないとか意見表明したくなるんだろうね。)
(司法(法務省管轄)だけではなくて、医療、福祉(厚生労働省管轄)が連携して、色々な人が関与してるんだね。
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鑑定留置の3ヶ月間は勾留期間に含まれない
被疑者が逮捕されて以降、勾留されたのち、検察官が起訴または不起訴の処理をしますが、検察官の請求により裁判官が鑑定留置をするかどうかを決め、決まればそこから3か月ほど、留置されながら医師の面談を受けることになります。
その3か月は、勾留期間には含まれず、鑑定留置が終了し、医師の意見を踏まえて検察官が起訴、不起訴を決定するのです。
医師の鑑定意見に疑義があると思われる場合には、弁護人が再度被告人の鑑定を裁判所に対して申し立てることになります。
(精神鑑定を受けるということは通常の勾留より3ヶ月長い。同じ勾留期間じゃ鑑定は無理ということ。)
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責任能力がないとは契約行為ができないということ
個人も法人も責任能力がないと公的に認定された人と契約を結びたいとは思いません。
賃貸借契約、売買契約、クレジットカードの利用、お金の貸し借りはできません。刑務所に収監されなくても社会的な死を意味します。
身元保証人がいない限りは。
(責任能力がないから無罪の結果が社会的な死ってすごい皮肉だね。)
(お金があり余って持ち家があって一生仕事をしなくても生きていける人でないと生きていけません。)
(そういう人は事件を起こさないってば。)
(精神鑑定って結果次第では弁護人が依頼人を社会的に葬ることにもなるんだね。)
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他の収監者を守るための措置でもある
本当に精神が病んでいるなら、他の収監者に被害が及ぶ危険性があるから一緒に刑務所に収監しないという考え方もある。
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裁判は第三者の処罰感情を満足させるためのショーではありません
あんな奴は許せない、死刑にすべきだ。精神鑑定で責任能力がないから刑事責任を問われないなんて法律の不備だ、許せない。という感情論を排して、
事実に即して判断されていることが本筋です。
精神鑑定依頼も真実を突き止めるための過程と考えます。
現行法で対応できないから、厚生労働省のスキルにスライドするようなテクニカル対応ではなく、司法制度の範疇で完結する制度の拡充が望まれます。