英、EU離脱へ 国民投票でBBCなど報道 :日本経済新聞
EU離脱問う国民投票に関するトピックス:朝日新聞デジタル
(2016年6月25日 日本経済新聞 朝刊1面)
「英、EU離脱を選択
離脱 1741万742票 51.9%
残留 1614万1241票 48.1%
登録有権者数 4649万人、投票率 72.2% 」
投票結果が出たからと言って今すぐ離脱できるわけではない。
貿易協定を結び直さなければならない。
交渉期間はまず2年
英国が欧州委員会に脱退の意思を通知。
欧州理事会が離脱交渉の方針を決定し、英国と欧州委員会が交渉を開始。
基本条約(50条 リスボン条約)は離脱を通告した後、2年間の経過期間を与えると規定している。
2年間はEU法が適用され、EUとの貿易でいきなり関税が適用されることはない。
2年間の期限をもって欧州委員会が脱退協定で合意し離脱となる(はず)。
※ただし全EU加盟国が合意すれば交渉期間の延長は可能。
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離脱をめぐるEUと英国の交渉が
「最低7年かかる。」(EUトゥスク大統領)
「10年以上かかる可能性がある。」(英政府)
すんなりとはいかない。
「EUとの交渉が決裂すれば、英は世界貿易機構(WTO)のルールに基いてEU加盟国と貿易せざるを得なくなる。」
輸出品に関税がかかることになる。
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現地法人は英国外に
単一の免許でEU域内での営業を可能にする「パスポート制度」
英国に本拠を構える金融機関や現地法人は英当局の許可を受けEU諸国に支店を出すことが出来た。
交渉次第では同制度を利用できなくなる恐れがある。
出て行く英国にパスポート制度を認めるのはムシのいい話。
域外の金融機関はロンドンを離れて欧州拠点としてフランクフルト、ブリュッセルへいらっしゃいというという話になりかねない。
設備投資を控える。
工場を建設したり増設してもEUへの輸出に関税がかかるならメリットがない。
様子を見よう。
或いは様子を見る時間のロスを避けるために、先が不透明な英国へ投資は白紙に戻して代替地へ建設しよう。
空港 港もパスされる。
EUとの貿易に関税がかかるのならEU域内の空港 港を経由しよう。
それでも離脱の声が大きいわけ
EU加盟のメリットとデメリット
(6月21日 日本経済新聞 朝刊 8面)
メリット
「EUは人口5億人を超える単独市場。域内貿易には関税がかからない。
英国の2015年の貿易総額約7158億ポンド(約106兆円)のうち49%をEUが占めた。
米国(11%)、中国(7%)を大きく上回る数字だ。
域外の国との関税率についても、EUはまとまって交渉し加盟国全体で適用される。英国だけで取り組むよりも交渉力がつくと見られている。
金融機関が(域内の)1国で事業許可を得れば、他国にも進出できるパスポート制度。
世界の金融機関の多くが英国に拠点を置き、欧州に展開している。」
デメリット
「離脱派はEUが課す規制による弊害が大きいと訴える。
例えば漁業。加盟国は漁獲量の管理・規制を受けるが、英国の港町では生活に必要な漁業ができず廃業せざるを得なかった漁師も多い。
域外国との自由貿易協定(FTA)交渉も域内の調整に時間がかかりすぎる。
英国単独で交渉した方が、早く結論にたどり着ける。」
残留派は交渉力(有利な条件 中身)、離脱派は早さ(スピード)がメリットと言っている。
拠出金の負担は?
「EUの予算は原則、経済規模に応じて加盟各国が負担する拠出金で賄われる。
2014年、英国がEU予算で負担した金額は140億ユーロ(約1兆6500億円)。
28カ国全体の1329億ユーロの10.6%を占め、4番目に多い。
(ドイツ 21.9%、フランス 15.8%、イタリア 11.9%)
ただ、国民総所得(GNI)(国民が1年間に新たに産み出した財・サービスの付加価値の合計 国内(GDP)ではなく国民であるため海外支店等の所得も含む)に占める拠出金の割合でみれば、英国は0.65%と低く、28カ国中最低。
ベルギーは1.3%、ドイツは0.98%を負担している。
99年に誕生したEUの単一通貨ユーロに不参加。通貨ポンド発行を主権としてイングランド銀行が独自に金融政策を決める。
国境検査なしで域内を移動できる シェンゲン協定にも不参加。」
それでも不満。
「EU加盟国拡大で予算はインフラが未整備な東欧などに再配分される傾向が強まっている。
支払った額より英国のために使われる額が少ないため、一部の英国民の間では「差し引きで英国は負担過多だ」と不公平感がある。」
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細かい規制にうんざり
(6月21日 朝日新聞 朝刊 国際13面 EU規制細かすぎ?)
「割れやすい薄い素材の風船を膨らます際は大人が監視すること」
拠出金から給料が出るEUの官僚がこんなルール作りやがって、バカにしてるのかと英国人は思っているのだろう。
「掃除機の消費電力は2017年9月から900ワット以下とする」
吸引力の強い掃除機はダメ? 英国製のあの掃除機を狙い撃ちか?
「バナナは卸売段階で1房最低4本」
(NHKの6月25日放送のニュース深読みでは 曲がったバナナはダメとか言っていた。マジか?)
「離脱派がつくったドキュメンタリー仕立ての映画では
牛乳に1万2653件、自動車に1872件、パンに1246件 EUによる規制がこんなに多いと推計した。」
離脱派の主張だから誇張もあるだろうけど、お役人が仕事をしていることを説明するために細かいルールを作っているという印象を受ける。
お役所仕事が人々を分断する。
予算は足りてます。余ってます。来年から削減して下さい。
そんなことは普通言いません。
言えばやる気がないといわれます。
予算が足りない、人が足りない。
足りないと言う以上は使い切らなければならない。
欧州も同じなのか。
イギリスが離脱するという。拠出金が減る。予算が削減される。大変だ。
欧州の平和(目的)のためのEU(手段)が、EU(手段)のための欧州になっていないか、話があべこべになっていないか。
そんな不満を受けて極右政党が力を得る。
離脱後のシナリオはない。経済的なデメリットもある。それでも金融危機後の緊縮策、増えない所得、移民問題という不満の受け皿となっている離脱派という構図。
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そもそもなぜ投票することになったのか?
(6月19日 朝日新聞 朝刊 6面)
「2013年1月 キャメロン首相は「2015年の総選挙で政権が継続すれば2017年末までに国民投票を実施する。」と表明した。」
なぜか?
「ギリシャの債務危機に端を発したユーロ危機で、ロンドンに世界有数の金融街シティがある英国は主要産業の金融が打撃を受けた。
その結果、国民は増税や福祉手当の削減を強いられた。
その中で南欧諸国などへの支援を迫られ国民の不満が爆発した。
※脱EUを掲げる政党に支持が集まった。」
キャメロン政権の選挙対策、党をまとめるための手段だったんだ。
※UKIP(英国独立党)
投票をしても残留派が勝つとタカをくくっていたのではないか、
投票を約束することによって有権者、党内の離脱派のガス抜きをする。
国民投票実施の表明によってEU委員会に揺さぶりをかける。国民は不満を抱いていると主張する。譲歩を迫る。
一石二鳥の名案だった。
ギリギリで残留派が勝利すれば効果的だった。
ところが蓋を開けてみたら逆の結果になってしまった。
策士策に溺れてしまったんじゃなかろうか。
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脱退以前にそもそも何故イギリスはEUに加盟したのか?
(6月19日 日本経済新聞 朝刊 13面 日曜に考える)
「英国は1973年に※欧州の病人としてEUに加盟して以来43年間、実は経済的繁栄を謳歌してきた。
(※欧州の病人…70年代の英国は財政赤字と不況にあえぎ英国病と皮肉られていた。
EU加盟は貿易促進など経済利益が狙いだった。)
この間の英国の1人あたり国内総生産(GDP)の伸び率は年平均1.8%と、ドイツの1.7%、フランスの1.4%、イタリアの1.3%を上回る。
加盟したことで、英企業は競争に直面し鍛えられ、同時に単一市場へのアクセスを得、さらに海外から大規模な長期投資がなされるなど大きな利益を受けてきた。
つまり、EUが英国の発展の足かせになっているという主張は根拠がないということだ。」
さらに
「英国は欧州各国ほど労働規制が厳しくないことによっても競争力を発揮してきた。
英国は欧州大陸から来る野心的で勤勉な若者からも恩恵を受けた。
移民問題を巡る失敗は、大規模な移民流入に適応するために必要な資源を自治体に与えなかった失敗だ。」
ドイツやフランスといった欧州大陸国家に比べて労働基準が緩いからコスト競争で勝ったということか。
(6月23日 朝日新聞 朝刊 国際12面)
「彼ら(移民)は最低賃金の自給7ポンド弱(約千円)で休日も働き残業もいとわない。英国人はそんなことできないでしょう?
仲介料などが引かれ、移民が受け取るのは最低賃金の1/3程度。英国人はそんなお金では働けない。」
ブラックな労働条件でイギリス人の代わりに移民を雇用してコストを下げる英国企業。
規制をしてこなかった英国政府。
移民にとってはこれでも条件はよかったということか。
移民の純増数は年間約30万人。
「責められるべきは監督官庁や行政のはずだ。それなのに移民がスケープゴートにされている。」
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(6月25日 日本経済新聞 朝刊9面)
「スコットランド 離脱 38%、残留 62%
北アイルランド 離脱 44.2%、残留 55.8%
ウェールズ 離脱 52.5%、残留 47.5%
イングランド 離脱 53.4%、残留 46.6%」
スコットランドは残留派が多数派、離脱を決めた英国からの独立運動が再燃!独立してEUに復帰しよう!
北アイルランドのカトリック系はEU加盟のアイルランドとの統一を目指して※プロテスタントとの対立が再燃!
「※北アイルランドでは1960年代からプロテスタント系の住民とカトリック系の住民が激しく対立し、テロや抗争で3千人以上の死者が出た。
(アイルランドはカトリック、イギリスは※プロテスタント、イギリス領の北アイルランドではカトリック系は少数派なのでアイルランドとの統一を願う。
アイルランドと統一されたら残されたプロテスタント系が逆に少数派になる。)
英国のEU離脱でカトリック系が疎外されるような事態になれば、98年に達成した和平合意が再び揺らぎかねない。」
グレートブリテンの2つが分離したらリトルイングランドになってしまう。
※イギリスのプロテスタントはイギリス国教会 ローマ教会から分離独立したイギリス独自の教会制度で国王を首長とする。カルヴァン派ピューリタンは迫害されてアメリカ新大陸に移住した。)
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残留支持派の地域は投票率が低かった。
「投票率はロンドン69.7%、スコットランド67.2%、英全体の投票率72.2%を下回った。」
投票をやり直したら逆転できるんじゃないか。
(6月24日 朝日新聞 朝刊 総合3面)
「22日時点 英世論調査会社YouGov調べ 年代別調査
18~24歳 残留 72% 未定 9% 離脱 19%
25~49歳 残留 48% 未定 12% 離脱 40%
50~64歳 残留 38% 未定 11% 離脱 51%
65歳以上 残留 33% 未定 7% 離脱 59%」
イギリスもシルバー民主主義だ。
これから就労する世代の意見は反映されなかった。
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どこの国も反対を表明
(6月23日 日本経済新聞 朝刊 13面)
「17日 ドイツ メルケル首相、21日 フランス オランド大統領、22日 イタリア レンツィ首相は残留を呼びかけた。」
「(介入と受け止められても)世論調査で両派が伯仲する状態の中、背に腹はかえられなくなった。」
「東欧 経済規模の縮小懸念」
「9日 ハンガリー、ポーランド、チェコ、スロバキアの首相は英国残留を訴える共同声明を出した。」
(6月24日 日本経済新聞 朝刊 9面)
「ロシア 資源収入の減少を懸念」
「ロシアにとって欧州は自国産エネルギーの最大の供給先で、欧州向けの原油輸出は全体の6割を占める。」
「英国がEU(欧州連合)から離脱すれば(ロシアの)資源収入が急減し、市民の生活水準が一層低下するのは避けられない。」
「プーチン政権の要人を含めて、ロシアの富裕層の多くは巨額の資産を租税回避地(タックスヘイブン)であるロンドンで管理している。」
ロンドンはタックスヘイブンでもあるわけだ。
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本当に離脱できるの?
(6月27日 日本経済新聞 夕刊 1面)
『EU離脱広がる「後悔」
離脱に投票したという男性は「僕の票なんて関係なくどうせ残留(が勝つ)だろうと思っていた。」
離脱に投票した女性が「投票所にもう一度行き、残留に投票したい」
離脱決定の翌日になって
「現実感がわいてきた」
「正直ショックを受けている。まさか実現するとは思っていなかった」』
だって。投票はお祭り騒ぎだったんだ。
株式、先物、為替の乱高下は何だったのか。
(6月28日 日本経済新聞 朝刊 3面)
「英BBCによると離脱手続きはまず英議会がかつて制定した法律を廃止する必要があるという。」
「下院議員の過半はこれまで残留を支持してきた。」
だから「EU離脱に必要な法廃止の手続きを否決できる。」
議会が妨害を続けることで英国政府は離脱の意思を欧州理事会にいつまでたっても通知が出来ない。
いつまでたってもEUにとどまり続けることになる。
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投票日の23日を「独立記念日」とするよう求める署名は1万7千人
投票のやり直しを求める署名は374万人(現地時間27日午後4時 日本時間28日午前0時)
早くも離脱の熱は冷めてしまった。お祭りだったんだ。
つづく